「ソフトボーイ」5076円(税込み)、DVD発売中、東映ビデオ

練習に汗を流す男子ソフトボール部の部員たち。映画と同じように全国大会出場を目指している=小城市牛津町の牛津高

映画で取り付けられた看板を今もそのまま使っている=小城市牛津町

主役の一人、ノグチのモデルになった野口毅さん。7年続く居酒屋は映画公開時に開店し、多くの映画ファンが足を運んだ=佐賀市鍋島の「くら蔵」

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■“佐賀発”の青春物語

 澄み切った秋空の下、きれいに整備されたグラウンドに高校生たちの声が響き渡る。彼らもこんなふうに必死に白球を追いかけたのだろうか。

 女子生徒が圧倒的に多く、男子生徒が全体の1割程度と少ない小城市牛津町の牛津高が舞台となった2010年公開の映画「ソフトボーイ」。「県内の高校には男子ソフトボール部が一つもないから、すぐに全国大会に出られる」と、お調子者のノグチ(賀来賢人)とオニツカ(永山絢斗)が、創部に駆け回る実話をもとにした青春映画だ。

 メガホンを取ったのは、若手俳優を多く起用したテレビドラマ「ケータイ刑事」などを手掛けた豊島圭介監督。当時、日本映画は男子高校生がシンクロナイズドスイミングに挑む「ウォーターボーイズ」など青春もののヒットが続いていた。豊島監督は撮影後、「成長して変わっていく20歳前後の俳優たちの一瞬をとらえたドキュメントにもなった」と答えている。

 主役の一人、ノグチのモデルとなった野口毅さん(31)=小城市芦刈町=は10年ほど前、福岡で料理修業をしているときに映画化の構想をプロデューサーから直接電話で聞いた。「自分たちがモデルなんて、最初は詐欺かと思った。それが一気に現実味を帯びてきて…。部員集めは本当の話だけど、“8割増し”ぐらいの内容になっている」と語る。

 映画では、寄せ集めでスタートした部員たちが競技の面白さにのめり込んでいく姿がいきいきと描かれている。牛津高の校舎が実際に使われ、トレーニングでは長い階段が印象的な須賀神社へ。行き詰まったときは広大な有明海の干潟を見に行く。撮影のほとんどが県内で行われ、豊かな自然の風景とともに物語が進む。

 映画のクライマックス。地区代表決定戦の相手だった大分県代表が試合に出られなくなり、部員たちは全国大会出場を決めるが、「実際は映画と違い、自分たちは全国大会には出られなかった」と野口さん。

 ただ、現実のドラマもここでは終わらない。県内唯一の男子ソフトボール部は少しずつ力を付け、創部2年目の2003年には大分県代表を破って全国切符を獲得。最近は今年の夏まで4年連続でインターハイに出場しており、映画が後輩たちの背中を押し、やる気にさせたことも間違いなさそうだ。

 学生時代の夢だった料理の道に進み、居酒屋を経営している野口さんは「何にも縛られず、やりたいことに熱中できた」と高校時代を懐かしむ。映画を見るたび、がむしゃらに突っ走っていた10代の自分にタイムスリップさせてくれる。

■「ソフトボーイ」ストーリー

 高校最後の夏、フレンチシェフを目指すオニツカ(永山絢斗)は、幼なじみのノグチ(賀来賢人)に振り回されながら、佐賀県内の高校で唯一の男子ソフトボール部を立ち上げる。何とか9人集めて練習を始めるものの、キャッチボールもまともにできない素人ばかり。すぐに全国大会に出場できると思いきや、公平を期すために、大分県の代表校との地区代表決定戦があることが判明。部員たちは練習にさらに情熱を注ぐ。

 監督は豊島圭介。出演はほかに波瑠、大倉孝二ら。2010年公開。カラー114分。

■MEMORY 【映画の看板】そのまま店名に

 部員たちが練習後に決まって立ち寄る軽食店も学校近くに実在する店だ。米穀店とともに27年前から営む有浦仁士さん(57)=小城市牛津町=は「当時、店名は付けていなかったけど、“オックスフォード”の看板が映画で取り付けられてね。そのまま店名にした」と明かす。看板も7年前の撮影時のままだ。

 店のシーンは丸一日かけて撮影された。波瑠や永山絢斗、賀来賢人らをひと目見ようと、店の周辺は高校生らでいっぱいに。「若い俳優さんたちはとても礼儀正しくて好印象だった」といい、疲れを全く感じさせず、何度も同じ場面を撮り直す様子を見守った。

 店の看板メニューは小麦粉ベースの生地に、めんたいポテトやハンバーグチーズなどを入れて焼き上げる「カルチャー焼」で全18種類。撮影中に差し入れたが、俳優陣にはベーコンエッグが一番人気だった。

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