不名誉な記録を止めることができなかった。昨年1年間に佐賀県内で起きた交通事故のうち、けがや死亡した人身事故の割合が、人口10万人当たりで全国最悪となった。これで2012年から3年連続ワーストワンである。

 14年の佐賀県の件数は1055・95件。全国平均450・79件の倍以上だ。さらに、全国平均はこの10年間、毎年、着実に減っているのに対し、県内は常に千件前後の高水準で横ばいが続いている。

 佐賀は電車やバスなどの公共交通機関が少ないので運転する機会が多い。軽自動車の100世帯当たり普及台数は102・2台と2年連続全国トップ。鳥栖に代表されるよう佐賀は九州を縦横に結ぶ交通の要衝なので他県からの流入も含め交通量が多い-だから事故が多いという声をよく聞く。しかし、果たしてそれだけだろうか。

 人口10万人当たりの最少は鳥取県の202・08件だ。鳥取とは人口や面積など県の規模感が似ているのに、佐賀の5分の1にとどまっている。ちなみに鳥取も軽自動車の普及台数は101・8台と高く、佐賀に次いで2位である。

 ほかにも、県外で事故を起こす人の割合は、佐賀は全国で2番目に高いというデータもある。よって、先に挙げた量的・外的要因に加え、佐賀県民の運転技量やマナーの悪さという内的要因も事故多発の一因とみなさざるを得ない。

 県内で運転していて危ないと思うことを三つ挙げる。一つ目は「車間距離」。私も追突事故を起こしたことがある。距離を空けるように心掛けているが、片側2車線だと割り込んでくる車が多い。昨年1年間に県内で起きた人身事故8870件のうち、原因の最多は追突で3992件。45%を占めた。

 二つ目は「意思表示」。ウインカーなどを使った曲がる、止まるといった合図や、運転者同士の目合わせ、手しぐさによる譲り合いなどのコミュニケーションが円滑な交通を生む。早めの意思表示が大事だが、他県のドライバーからは「佐賀は合図を出すのが遅い」という指摘が多いそうだ。

 三つ目は「優先順位」。交差点で右折待ちの車が、対向車の左折に合わせて曲がっていくケースが目立つ。それどころか先に曲がって左折車の進路を妨害したり、前から来る直進車も減速させたりしている。優先順位は直進、左折で右折は最後だ。それに、急いで曲がった先には横断歩道がある。特に右折時、右後ろから渡ってくる歩行者には気付くのが遅れやすい。交差点は事故多発地帯だ。

 県警交通部幹部は「いつもと違う」という不具合と、道路利用者の「不用心」が重なった時に事故が起きやすいと説く。例えばある日、急いでいて一時停止すべき交差点を止まらずに通過した。幸い事故は起きなかった。そのため「止まらなくてもいい」と自分で勝手にルール化し繰り返す。いつしかそれが「当たり前」となる。そしていつか、横から車が来る「いつもと違う」現象が起きるのに、「止まらなくても大丈夫」という「慣れ」と、手前勝手な「不用心」で事故が起きるのだ、と。

 交通事故は最も身近にある危険である。人ごとではなく、誰にでも等しく起こり得るという緊張感を常に持ち、県民挙げて汚名返上に努めたい。(森本貴彦)

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