佐賀空港への新型輸送機オスプレイ配備計画をめぐって、安倍晋三首相が「(米軍の)訓練の一部を佐賀で行うということで進めている」と参院予算委員会で述べた。防衛省がいったんは取り下げた米海兵隊の訓練移転方針を、実際にはあきらめていないという不信が広がる。

 多くの県民が「やはり」と受け止めたのではないか。

 防衛省は当初、佐賀空港へのオスプレイ配備を佐賀県側に打診するに当たって、陸上自衛隊が導入するオスプレイの配備と、目達原駐屯地のヘリ移転、そして米軍オスプレイの訓練移転-の3点を合わせて要請していた。

 だが、受け入れ交渉が難航したため、昨年10月に中谷元・防衛相(当時)が米軍機の移転については取り下げた上で、全国の空港を横並びで検討すると変更した。

 今回の首相発言を受けて、稲田朋美防衛相は「沖縄の負担を全国で分かち合う前提で、一つの例示だった」と火消しに走り、佐賀市の説明会では九州防衛局の市川道夫企画部長が「全国のほかの空港と横並びで検討させていただきたい。総理の発言もそのような認識でなされたと思う」と釈明した。

 あまりにも苦しい説明ではないか。一国の首相が国会の場で発した言葉は重い。それを現場が推測を交えて否定することが許されるのだろうか。

 これで、防衛省が佐賀県側に示してきた米軍機の訓練移転取り下げは、“方便”に過ぎないのがはっきりしたのではないか。まずは県民の抵抗感が少ない自衛隊機を受け入れさせ、将来的には米軍機を移すというシナリオが透ける。

 防衛省が言う「横並びで検討する」という説明にしても、いったん自衛隊機を受け入れれば、オスプレイのメンテナンス設備などが整う空港が「最適地」として候補になるのは明らかだろう。

 自衛隊機の受け入れは同時に、将来の米軍機の受け入れにつながるのだと、私たち佐賀県民は認識しておく必要がある。

 佐賀新聞社が先日実施した県民世論調査では、防衛省の米軍機取り下げを受けて、自衛隊機に限って賛否を尋ねたが、それでも反対32・7%、賛成29・8%と拮抗(きっこう)している。最も多かったのは「どちらとも言えない」(36・9%)だった。

 県民の理解は深まっているとは言えない。

 そこへ飛び出した首相発言は、これまでの議論の前提を根底から覆してしまった。佐賀県の山口祥義知事は「事実関係や、どういう考えで答弁したのか確認することから始めたい」と困惑し、県有明海漁協の徳永重昭組合長も「何かうやむやにしながら話が進められているのかもしれない」と不信を口にしている。

 こうした困惑や不信が広がる中、県民的な論議を深めることができるだろうか。山口知事は受け入れるかどうかの判断材料をそろえるために米軍によるオスプレイのデモフライトを防衛省に要請し、判断時期についても「そう遠くはない」としてきた。

 だが、首相が明言した以上、米海兵隊の移転から目を背けたまま決断するわけにはいかないだろう。議論はふたたび振り出しに戻ったと言わざるを得ないのではないか。(古賀史生)

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