国立感染症研究所は27日、ノロウイルスなどが原因の感染性胃腸炎の1医療機関当たり患者数が、直近1週間(12日~18日)で20・89人となり、大流行した2012年(19・23人)を上回ったと発表した。厚生労働省によると、現行の統計を始めた1999年以降、20人を超えたのは06年(22・81人)以来、10年ぶり2回目。

 ノロウイルスは感染すると、1~2日の潜伏期間の後、嘔吐(おうと)や下痢を繰り返す。保育所や幼稚園、学校などで感染が広がることが多い。厚生労働省は手洗いや消毒を徹底するよう呼び掛けている。

 全国に約3千ある定点医療機関から報告された患者数は1週間で6万6015人。1医療機関当たりの患者数が多かったのは、山形(47・27人)、宮城(34・08人)、埼玉(31・66人)、宮崎(30人)、富山(29・24人)だった。21都府県で流行警報の基準となる20人を超え、猛威を振るっている。佐賀は11・57人。

■遺伝子変異で感染拡大か

 激しい嘔吐や下痢を引き起こすノロウイルスが猛威を振るっている。専門家はウイルスの遺伝子変異で感染の危険性が高まっていると指摘し、手洗いや消毒で個人の予防を徹底するよう呼び掛けている。

 ノロウイルスは頻繁に遺伝子変異を起こす。今シーズン、患者から検出されているウイルスの中で多くを占める遺伝子型は「G(2)・2」。過去にも見つかっている型だが、国立感染症研究所や北里大などのチームが川崎市と茨城県の患者計19人から検出されたこの型のウイルスを詳しく調べたところ、全てで感染に関わる部分の遺伝子に変異が起きていることが分かった。

 ノロウイルスの表面にはとげのある膜があり、これが人の細胞にくっつくことで感染する。過去に感染したウイルスに免疫ができるのはこの膜の形を記憶するためだが、遺伝子が変異して表面のとげの形が変わると免疫が働かなくなる。

 このため過去にこの型のウイルスに感染したことのある人も感染する恐れがあり、大流行した06年にもこうしたウイルスの変化が起きていたと考えられている。

 感染研の木村博一室長は「症状の重さに変わりはないが、変異した型が流行の主流となると、初めて感染する子どもだけでなく、大人にも拡大していく恐れがある。リスクを減らすためには個人の予防が大原則だ」と話し、入念な手洗いや消毒、食品を十分に加熱するよう訴える。

 一方、治療法やワクチン開発に向けた研究も国内外で進む。米ベイラー医大などのチームは今年8月、人の細胞を使ってノロウイルスを培養することに初めて成功したと発表。1968年に米国で集団感染が報告されて以来の「48年の謎」を解く成果とされ、ウイルスの詳しい性質の解明に期待が高まる。

 国内の製薬会社も、タンパク質を人工的に合成しウイルスと同じような形状の粒子を作ってワクチンを開発、臨床研究を進めている。

このエントリーをはてなブックマークに追加