今年5月に佐賀など17都府県の現金自動預払機(ATM)から18億円以上が一斉に引き出された事件で、全国の警察による逮捕者が100人以上に上ることが17日までに、捜査関係者への取材で分かった。大半は末端の現金引き出し役で、少なくとも五つの指定暴力団の傘下組員が含まれる。南アフリカの銀行が発行したカードの顧客情報を悪用するなど、海外の犯罪組織も関与したとみられるが全容解明には至っていない。

 ATMにカードを挿入した後に言語を「日本語」に設定、「残高」ではなく「引出」を押す-。別のおれおれ詐欺に関与したとして、新潟県警が5月下旬に詐欺容疑で逮捕した少年の関係先から見つかったのは、現金を引き出すために使われたのと同じ4桁の暗証番号と、ATMを操作する手順を記したメモだった。カードが使える大手コンビニチェーンの名前も書かれていた。

 約1700台のATMから現金が引き出された時間は、わずか2時間あまり。ほぼ同じタイミングで広範囲に及んだ犯行の手口から周到な準備がうかがえるが、逮捕者の多くは現金を引き出す「出し子」で、末端の役割に過ぎない。捜査幹部は「短期間で多くの出し子を集められる暴力団の存在は不可欠」と指摘した上で、おれおれ詐欺など特殊詐欺の要員を使った可能性があるとしている。

 事件に使われたカードは、白い無地のものや無関係の飲食店のものもあり、南アフリカのスタンダード銀行の顧客情報が入った磁気テープを貼り付けて偽造されていた。さらに、違う暗証番号を入力しても現金が引き出せるようになっていたことも判明。スタンダード銀行の承認機能が事前にハッキングでまひさせられていたとみられ、高度な技術がうかがえる。

 巨額の利益を得たであろう事件の中心にいる人物や組織が捜査の網に掛からない中、逮捕された引き出し役の大半は実刑だった。警察庁の幹部は「わずかな報酬に目がくらみ、安易に誘いに乗った代償は大きい」と強調した。

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