原発再稼働に異論を唱える声が地方で広がっている。7月の鹿児島県知事選に続き、新潟県知事選でも「脱原発」を掲げる新人が自民系候補を破って当選した。同県に立地する東京電力柏崎刈羽原発の再稼働が遠のく形となるだろうが、福島の原発事故の検証が不十分なまま再稼働路線に突き進む国への警鐘と言えよう。

 鹿児島県の場合、原発も争点だったが、現職に対する多選批判が強かった。それを考えれば、新潟県知事選で、「福島の事故の徹底検証なしに柏崎刈羽の再稼働の議論はない」とした現職泉田裕彦氏の路線継承を訴えた野党系の米山隆一氏(49)の勝利の方が衝撃は大きかった。

 日本維新の会代表の松井一郎大阪府知事が「住民投票的な選挙だった。政治的に再稼働は無理だ」と述べたが、その通りだろう。

 柏崎刈羽原発の再稼働問題はほかの原発と大きく意味が異なる。東電が起こした福島第1原発事故の処理費用は、柏崎刈羽原発の再稼働による収益などで費用を捻出する計画だった。その原発が当面、再稼働が望めないとなれば、東電だけでなく、政府も大きな痛手となる。

 このような状況の中、東電だけでは捻出できない事故処理費用を、電気料金に上乗せする形で国民に負担を求める案が簡単に理解を得られるとは思えない。東電自身も原発にすがる経営からの自己改革を目指す必要がある。

 共同通信社が新潟県知事選前に実施した世論調査では、再稼働に「反対」「どちらかといえば反対」は計60・9%で、「賛成」「どちらかといえば賛成」の計24・2%を2倍以上も上回った。

 このうねりは特定の地方だけの現象ではない。佐賀新聞社の県民世論調査を含め、多くの調査で再稼働反対が賛成を上回っている。福島の事故から5年半が過ぎたが、原発がなくても生活ができていること、さらには安全面で不安な原発に再び依存することへの抵抗感が数字に表れているのだろう。

 政府は電力の安定供給のために原発の活用は必要との認識を示す。しかし、川内や伊方原発の再稼働でもそうだったが、原子力規制委員会に判断を丸投げしているような状態で、積極的に政治責任を果たしているように見えない。賛否が分かれる政策となると、政権が表に出ない姿勢に国民は疑問を感じているのではないか。

 野党第一党の民進党の対応も曖昧だ。新潟県知事選は再稼働を望む電力労組への配慮で自主投票とした。選挙戦終盤で新代表の蓮舫氏が応援に入り、つじつまを合わせたようだが、これをもって民進党の勝利とは言えない。二大政党が原発論戦を避けていることが、地方の不信感の底流にある。

 その流れは玄海原発が立地する佐賀県も無縁ではない。知事と20市町の首長の会議で、伊万里市の塚部芳和市長と神埼市の松本茂幸市長が再稼働に反対の考えを示した。「市民の不安な思いを代弁しなければならない」のが理由だ。

 再稼働の地元同意は知事と玄海町長に委ねられる。判断の際は県民の不満や不安を十分に考慮すべきだ。反対した市長2人以外からも国の説明不足を指摘する意見が出ていた。国が納得のいく説明をするまで、地方は粘り強く問い続けるしかない。(日高勉)

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