来店者のために新聞を置いている喫茶店・和蘭豆。客との会話のきっかけにもなるという=佐賀市のJR佐賀駅構内

 列車の発車ベルが一日の始まりを告げる。鳥栖市のJR鳥栖駅。博多方面の始発が出る午前5時ごろから、近くのコンビニエンスストアは徐々に忙しくなる。

 通勤通学の人たちが軽食や飲み物を買い求める中、スーツ姿の男性が新聞を手に取っていく。日中はタクシーの運転手や近所の高齢者が買いに訪れ、サッカーJ1サガン鳥栖の試合翌日には、さまざまな人たちが買い求めていくという。

 コンビニが社会に浸透する以前、新聞は街のたばこ店や駅の売店で売られていた。主要な駅のホームにも売店があり、手前の棚に新聞各紙がずらりと並んでいた。鳥栖駅の1、2番ホームには、そんな売店が佐賀県内で唯一、残っている。

 ホームで列車を待つ人たちの風景は、スマートフォンの普及で様変わりした。「漫画本を読む人さえ少なくなった」と店舗責任者の中村博孝さん(65)。それでも新聞を置き続けるのは「必要としている人がいるからね」。慣れ親しんでいる人やインターネットとは無縁の生活をしている高齢者の姿を思い浮かべる。

 佐賀駅構内に40年店を構える喫茶店「和蘭豆(らんず)」。店主の早田正敏さん(73)の一日は、店に置く新聞の端をホチキスでとじることから始まる。

 かつて喫茶店に必ずあった雑誌や新聞は、新興のカフェチェーン店などでは見掛けない所も出てきた。早田さんの店でもスマホなどを手に時間を過ごす人が増えているが、現在3紙を定期購読している新聞を「減らすつもりはない」。

 常連客の中には新聞を読むために来店する人がいる。お目当ての新聞に先客があると、「あの人が読み終わったら教えて」と耳打ちしてくる人もいて、店のサービスの一つとして欠かせないものだと思っている。

 店は場所柄、いちげんの客も多いが、新聞はそうした人との会話のきっかけもつくる。出張で佐賀を訪れた兵庫県の大久保圭貴さん(46)は地元紙びいきだ。「その土地のニュースを話題にした方が顧客との会話も盛り上がるからね」

 ネットの登場で人々は容易に情報収集できるようになり、興味の範囲にしか目を向けない傾向もある。そうした時代に、広げればさまざまな話題に触れることができる新聞は、人と人とをつなぐメディアとして暮らしの中に息づいている。(おわり)

 =新聞週間標語= 

 つながるよ ネットの話題も 紙面から

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