記者会見する三菱重工業の宮永俊一社長=18日午後、東京都港区

三菱重工業が建造し、巨額損失が発生した豪華客船「アイーダ・プリマ」(同社提供)

 三菱重工業は18日、採算が悪化している商船事業について、多額の損失を出した大型客船の建造から事実上、撤退する方針を明らかにした。今後は貨客船や中小型客船に限定して受注する。設計などを手掛ける部門の分社化も検討し、提携協議中で建造量国内首位の今治造船(愛媛県今治市)など3社と基本設計などで連携を強化する。

 総トン数が10万トン超の大型客船を建造できるのは、日本では三菱重工に限られている。同社が撤退すれば、国内での大型客船事業が途絶えることになりそうだ。

 提携協議は2016年度中に結論を出す方針。3社と共同出資し、船の建造を請け負う新会社の設立も検討。世界的に造船受注が振るわない中、三菱重工は他社との協業で祖業である商船事業の生き残りを図る。

 東京都内で記者会見した宮永俊一社長は大型客船について「事業構造や環境に大きな変化がない限り、今後取り組むべきではない」と強調した。商船事業に対しては「何とか造船の技術を残していきたい」と祖業への思いを述べた。

 分社化では、三菱重工の長崎造船所(長崎市)と下関造船所(山口県下関市)の設計部門なども本体から切り離す対象とする。会見に同席した鯨井洋一副社長は、一連の改革に伴う人員削減や配置転換について「いろいろな手を打つ可能性は否定できない」と述べたが、詳細は今後検討するとした。ただ提携協議している今治造船、大島造船所(長崎県西海市)、名村造船所(大阪市)は、船の建造量で三菱重工を上回っている。同社の思惑通り協議が進むかは不透明だ。

 三菱重工は11年に海外企業から計1千億円で大型客船2隻を受注した。だが内装工事に手間取るなどしたことで建造が遅れ費用が拡大。16年3月までに豪華客船「アイーダ・プリマ」1隻を引き渡したが、16年3月期までに累計2300億円を超える特別損失を計上し、大型客船事業を続けるかどうか検討していた。【共同】

 ■三菱重工業の造船事業 同社の祖業で、三菱財閥の創業者である岩崎弥太郎が政府から長崎の製鉄所を借り受け、1884年に始めた。戦時中は長崎造船所で旧日本軍の戦艦武蔵を建造した。現在は客船やフェリー、液化天然ガス(LNG)の運搬船などを手掛ける。高い設計、開発力が強みだが、生産面のコスト競争力に課題がある。そのため、昨年10月に長崎造船所の一部事業を分社化したほか、他社との提携拡大を目指すなど構造改革を進めている。

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