鶴か、電気か-。オグロヅルの越冬地になっているヒマラヤ山脈の小国ブータン。毎年260羽以上の鶴がフォフジカ谷で過ごすが、電気を引こうとしたときに鶴の生息地を通る送電線が問題になった。住民は「鶴が来なくなるなら電気はいらない」と決める◆国内総生産(GDP)ではなく、幸せを測る指標「国民総幸福量(GNH)」を掲げるブータンらしいエピソードである。GNHは「文化的・精神的な遺産の保存・促進」「環境保護」など四つの柱で構成している。物質的な成長が必ずしも幸福につながるわけではないという考え方が根底にある◆日本ではGDPの見直しが始まった。これまでは含めてこなかった企業の研究開発コストを「投資」として算入するのをはじめ、防衛装備費や不動産の仲介手数料なども加えるという。GDPだけでなく、各種統計まで手を入れるようだ◆「日本のGDP統計というのは、どこまで本当に信用していいのか分からない」と山本幸三地方創生担当相がぼやいたが、政府内にはアベノミクスの成果が指標に表れてこないという不満がある。今回の見直しで日本のGDPは3%ほど底上げされるが、“はりぼて”では困る◆ブータンの鶴の谷はその後、ソーラーパネルなどで鶴と共生する道を見つけたと聞く。知恵さえ絞れば、幸せに手は届く。(史)

このエントリーをはてなブックマークに追加