パソコンを使った商品の3Dシミュレーション技術の指導を受ける河津智美さん(左)=西松浦郡有田町の県立有田窯業大学校

■いつでも学べる「場」強みに

 大分県出身の女性が今春、有田町の窯元に就職した。李荘窯業所の河津智美さん(24)。有田にある県立有田窯業大学校で2年間学び、有田焼の伝統や高い技術にほれ込み、迷わずこの地にとどまった。

 有田窯業大学校は、国内初の窯業専門の専修学校として1985年に開校した。窯業界の後継者や技術者の育成を手掛け、約2千人が卒業した。全国から焼き物づくりを志す若者や窯元の跡継ぎが集まり、韓国や中国など海外からも毎年のように入学者があった。

 「親子で机を並べる人もいて、世代を超えて刺激を受けた」。河津さんがこう評価する学びやは近年、有田焼の売り上げ不振と符合するように定員割れが続いていた。佐賀大学と統合し、芸術地域デザイン学部として新たなスタートを切るため、今春から募集を取りやめた。現場の技術者を育てる役割は、町内にある県立窯業技術センターが引き継いだ。半年間の一般研修で基礎的な技術を教え、「即戦力」を養成する。

 大学校ができる前、センターが後進の育成を担っていたため、産地には「昔の姿に戻った」という受け止め方もある。後に大学校の教壇にも立つ井上萬二氏らが講師を務め、職人や陶芸家を育てていた。上薬の指導にも専門家がいて、陶芸家が悩みを相談する場にもなっていた。

 こうした役割の強化を期待する声がある。新人教育に頭を悩ませていた窯元の「新入社員や若手を通わせやすくなる」という歓迎ぶりは、大学校の教育と、短期間で技術を授けてほしい現場の要望にずれがあったことの裏返しでもある。

 業界側は不況下では雇用能力が落ち、優秀な学生がいてもわずかしか雇えなかった。大学校の存在を生かし切れなかった側面もあり、衣替えをした教育拠点でどう人づくりを進め、卒業後の受け皿を整えるか、一緒に思案することになる。

 窯業技術センターの一ノ瀬弘道所長(59)は、商品開発や販売を含め「よりきめ細かく業界の要望に応じる必要がある」と強調する。研修では、現場が希望する鋳込みやコンピューター技術を学ぶコースを新設した。特定の技術を短期で集中的に学ぶコースや、受講生のニーズに合わせて時間帯や課目を調整する制度の運用も予定している。

 有田に残った河津さんは10月初めから週に数回、再び窯業大学校に通い始めた。窯元で担当するコンピューターを使った商品の3Dシミュレーション技術を向上させるためだ。窯業技術センターに相談し、指導を受けることになった。

 「伝統と新技術が融合することで、より高い品質の商品が生まれる」と河津さん。「学びたいときに、その場があるのが有田の強み」-。産地ならではの「いつでも学べる場」は、新たな発想を生み、有田の創造性を高めていく。

■有田窯業大学校

 1985年開校。4年制と2年制の専門課程と1年間の一般課程がある。人間国宝の十四代酒井田柿右衛門氏が学校長を務めたほか、井上萬二氏らが講師として学生を指導した。2016年から佐賀大学と統合し、4年制は佐賀大芸術地域デザイン学部芸術表現コース有田セラミック分野に移行。2年制と一般課程は県窯業技術センターの窯業人材育成事業に引き継がれた。県立専修学校の国立大学法人への移管は全国でも例がないとして注目を集めた。

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