有田焼創業400年の今年、佐賀新聞は1年を通した連載企画として「有田焼400年 未来へ挑む」を展開した。元日にスタートした連載はきょうが最終回。5章、31回にわたる連載では、多様な視点で有田焼をみつめた。振り返ってみる。

 400年の伝統を受け継ぐ職人さんの神業には改めて驚かされた。1ミリの100分の1の世界を指先の感覚で成し遂げるろくろ職人村島昭文さんは、厚さ1ミリの素地に花などを彫る作業を「彫ってみると余裕があるもんだよ」と言ってのけた。今やコンピューターが競争相手となった型職人の樋渡誠治さんは「ハイテクを使いこなすには職人の勘というか、ローテクがまだ欠かせない」と自信をみせた。

 その伝統が“重荷”になることもある。パリの国際見本市で有田焼とコラボレーションしたアートディレクターの佐藤可士和さんは「生活様式が変化する中で伝統産業は新しい姿を考えることが大切。有田焼のクオリティーの高さが動きづらくしていないか。伝統から抜け出しきれていない」と指摘した。

 もちろん、有田も試行錯誤を重ねている。李荘窯業所代表の寺内信二さんは「流行を追うのではなく、有田がトレンドリーダーにならないと」と訴えた。陶磁器商社の百田憲由さんは「伝統に固執した和食器前提の商品づくりはとっくに曲がり角」と認識、「固定観念からの脱却」を目指した。「商社-窯元-型屋・生地屋」という有田の分業構図の弊害を指摘する声もあった。「店任せにせず、産地が一体となって使い手の声を聞き、有田焼の優れた点を伝える」姿が求められていた。

 連載企画から見えてきたものは、「伝統を守る」「若手を育てる」「時代と消費者を見据えた商品をつくる」「魅力ある焼き物の町にする」という取り組みが欠かせないことだった。

 「何度も聞いてきた」「言い古されたことばかり」という声が聞こえてきそうだ。だが、長年にわたる課題は横たわったままだ。連載でも紹介したように、波佐見や九谷、美濃など他の焼き物産地も同じように悩み、模索を続けている。波佐見はこの10年で大きく変わった。

 来年は「次の一歩」を踏み出さなければならない。町が一体となり、将来像を具体的に考えたらどうだろう。「商品開発」「海外戦略」「後継者育成」「町並み整備」「観光対策」…テーマはいろいろある。

 最初のめどは2022年度の長崎新幹線開業。停車駅でなくても、有田に目を向ける人は多いはずだ。「新しさだけでなく400年の伝統を感じさせる商品とは」「もっと散策が楽しくなる仕掛けは」「宿泊施設がない。商家などの空き家を活用できないか」「佐賀大との連携の具体像は」「肥前窯業圏の日本遺産認定をどう生かす」などなど。どんな提案ができるだろう。「新生有田」の夢の青写真が見たい。

=移動編集局 わが町未来形=

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