有田焼の新ブランド発表会で報道陣のインタビューに応じる百田憲由さん(左)=18日、東京都渋谷区の西武渋谷店

■変化恐れず悠久の産地へ

 乾杯のシャンパングラスを空ける間もなく、代表者は記者に囲まれた。東京都渋谷区の百貨店で18日に開かれた有田焼の新ブランド「2016/」の発表会。ブランド運営会社の社長を務める陶磁器商社社長の百田憲由さん(48)=西松浦郡有田町=は、身ぶり手ぶりを交え熱っぽく語った。

 「何かが変わる予感がする。創業400年を迎えた有田焼を次の50年、100年につなげていく。地方や佐賀を勇気づけるモデルにしていきたい」

 新ブランドは、佐賀県が支援する有田焼の海外市場開拓の一環として開発した。オランダやドイツなど、国内外の実力派デザイナー16組と、県内の窯元・商社16社が連携し、約300種類の新商品を生んだ。

 薄さやゆがみのない平面など、「焼き物の常識」を超えた気鋭のデザイナーの発想は、伝統産地への挑戦状でもあった。参加各社には驚きや戸惑いもあったが、打ち合わせを重ねる中、時代に合わせた変化の必要性を受け入れた。

 伝統への自負は時に、変革への足かせにもなる。国内外から招かれたデザイナーやプロデューサーの率直な意見は、ともすれば「井の中の蛙(かわず)」になりかねない歴史ある産地に、新風を吹き込んだ。「守りに入っていなかったか」-。外部の冷徹な目にさらされた業界からは、そんな自問の声が上がるようになった。

 新ブランドを製作する窯元の一つ、宝泉窯の原田元社長(55)は変革を肌で感じている。「以前ならデザインを見ただけで『無理』と判断するものでも『知恵を絞ってやってみよう』と、職人も一緒になって考えるようになった」

 ただ、県の事業に参加できたのは、資本や人員で比較的に恵まれた窯元や商社という側面もある。有田に数多くある家族経営に近い小さな事業所に、どう変革の波を広げていくか。今後は県による財政支援も細る。産地が自ら考え、動き出さなければならない。

 広く名が知れた伝統の名産品はふるさとの誇りになってきた。県外に出た町民は「有田焼の有田出身です」と自己紹介する。地場産業が息づくことで保たれる誇りや地域コミュニティー。伝統産業の再興はそのまま地域再生につながり、全県域にも有形無形の好影響を与えるのだろう。

 400年に限らず、有田はこれまでも大きな節目を、逆境を乗り越える転換点としてきた。海外市場が衰えたら国内で新たな顧客を開拓。磁器の生産技術が普及して独占状態でなくなると、高級品を手掛けるなど柔軟性を発揮してきた。

 変化を恐れない産地が悠久の時を刻む。

■新ブランド「2016/」

 佐賀県の有田焼創業400年事業で、新たな定番を目指して作られた皿やボウル、コーヒーポット、ブレスレットなどのスタンダードシリーズと、有田の技術の粋を集めた限定30セットのシリーズがある。限定版は、海外の美術館などからの引き合いもある。スタンダードシリーズは、有田町の有田焼卸団地にある店舗で販売する。初年度の売り上げ目標は3億円。

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