ミスター・ラグビー。平尾誠二さんにはこの愛称がぴたりとあてはまる。高校、大学、社会人と所属したチーム全てを日本一にした。荒れ果てた学校が全国制覇するテレビドラマ『スクール☆ウォーズ』がラグビーの普及に貢献したが、モデルとなる伏見工高の主将が平尾さんだった◆大男たちが激しくぶつかるグラウンドで、一人だけ冷静に見えた唯一無二の存在だった。頭脳的なパスと華麗なステップで相手をほんろうする。大観衆は彼が仕掛ける瞬間を待っていた◆その歩みは栄光だけで語れない。意外にも監督としてチームを率いるのは史上最年少の34歳で就任した日本代表だけ。1999年のW杯はパワー負けで全敗し、予選敗退した。リベンジの機会はついに訪れないままだった◆それでも世界を相手に、思考を止めることはなかった。代表監督を退いた後もプロ化など協会改革を提言したり、「チームワークとは仲の良さではない。自立した個人が勝利を目的にまとまることだ」と意識改革を訴えた。自分なら次はどう戦うかと考えていたのだろうか◆松任谷由実さんがラグビーを描いた「ノーサイド」は名曲だが、同じアルバムの「空耳(そらみみ)のホイッスル」も心に残る。<遙(はる)かな勝利 どれだけ自分を痛めれば届く>。53歳の死は早過ぎる。もう一度、代表監督の姿を見たかった。(日)

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