集中して球出しの練習をこなす大谷桃子さん=神埼市の西九州大学神埼キャンパス

■車いすテニス強化指定選手

 佐賀県に、世界の頂点を目指す車いすテニスプレーヤーがいる。西九州大学1年の大谷桃子さん(21)=佐賀市。テニスに明け暮れた高校を卒業後、一度は退いた競技者としての道。車いすテニスに出合い、7カ月で頭角を現した。四大大会の頂点、さらには4年後の東京パラリンピック出場を目標に汗を流す。

 大谷さんは栃木県出身。地元のテニスクラブに通っていた三つ年上の兄、悠馬さんの影響で、小学3年のころに競技を始めた。めきめきと力をつけて強豪の作新学院高校に進学し、3年生の時には個人ダブルスで全国総体に出場した。

 卒業後、テニスのアシスタントコーチや個人的なレッスンは続けたが、「一線は退こうと思っていた」。スポーツトレーナーを志し、東京都内の専門学校で鍼灸(しんきゅう)師の資格取得を目指したが、異変が起きる。入学直後に突然、右下肢のけいれんが止まらなくなった。

 車いす生活になり、トレーナーになる夢を断念した。「企業への就職を考えたけれど、やりたいことは全て大卒が条件だった」と大谷さん。車いすで通える大学を探し、父親の久さん(50)が単身赴任をしていた九州にある西九州大学への進学を決めた。

 転機は今年5月。車いすのジャパンオープンを観戦した際、車いすテニス日本代表の中澤吉裕監督から「頑張ってね」と声をかけられた。何気ない励ましに「何だか見返してやりたい気持ちになった。いい意味で火がついた」。再び競技に打ち込もうと決めた。

 通院先の佐賀市内の病院の理学療法士を介し、ジュニア世代にテニスを指導している古賀雅博コーチ(41)と巡り会った。7月以降、車いすテニスの国内3大会に出場して2度、準優勝した。国内ランキングを9位まで上げ、2020年の東京パラリンピックの強化指定選手に選ばれた。

 協会の推薦で11月に出場した全日本選抜車いすテニスマスターズでも、勝負強さを発揮して勝ち進んだ。決勝の相手はリオデジャネイロ・パラリンピック銅メダリストの上地結衣選手。5-7、1-6で敗れたものの、「サーブやフォアハンドで、思い描く展開に持ち込めるポイントもあった。強化していけば戦える」。手応えをつかんだ。

 練習は多いときで週6日。1日に5時間、ボールを追う。球出しを中心に、コートの深いところを目がけて鋭い打球を打ち込む。いいボールが入れば笑みを浮かべ、納得がいかなければ「あー違う。もう1球」。悔しさをあらわにする。

 車いすの操作は「女子の中では一番下手」と課題に挙げる。どうすれば素早い動きにつながるのか、練習の合間や私的な時間を割いて動きを試し、繰り返す。

 「テニスの技術が高い上に、飲み込みが早い」。古賀コーチは大谷さんをこう評する。車いすテニスの指導は初めてだが、大谷さんのプレーに磨きをかけるため、練習内容や戦術を一緒に試行錯誤している。

 年明けにはオーストラリアや英米での転戦も予定している大谷さん。「まずは世界でも上位へ」。挑戦が熱を帯びる。

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