<ある朝のかなしき夢のさめぎはに鼻に入り来し味噌(みそ)を煮る香よ>。石川啄木(たくぼく)の歌である。悲しい夢をみた朝、ふさぐ心をいくぶん晴れやかにしたのは味噌汁の香りであったのだろうか◆発酵学者で食に詳しい小泉武夫さんは、「味噌汁の匂いほど家庭に平和を感じさせ、家中を落ちつかせ、そして安心させるものはまれである」と著書で説いている。朝に具だくさんの一杯の味噌汁を飲むことで、一日の活力を得るという人は多かろう。朝食が原動力になる◆いま、佐賀の食材を朝ごはんに使って産品を売り込む事業「あさご藩」を、県が展開中だ。時代劇風のPR動画に注目が集まっている。劇中ではコメの「さがびより」、佐賀牛や佐賀海苔(のり)、そして呼子のイカなど極上の材料が膳に上がる。佐賀には全国に誇れる農水産物が数多い。山口祥義知事自ら発案したという切り口に興味を引かれる◆朝食だからこそのシンプルな調理法で、確かに佐賀産の食材の質の高さが際立つ。人気フードスタイリストが手掛けた献立を、県庁内レストランで食べることができる。公式サイトには「夏編」「秋編」のレシピが公開され、これから冬、春も登場するようだ◆この取り組みは、佐賀の産物を広め、体のリズムをつくる朝ごはんにも目を向けるきっかけになるだろう。折しも、新米の季節である。(章)

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