原発が立地する道県で、原発の安全性などを検証する独自の専門家組織の設置が相次いでいる。事故時の被害を最小限に食い止める施策に反映することなどが狙い。東日本大震災による東京電力福島第1原発事故後に新たに立ち上げた例があるほか、今年4月の熊本地震で安全面への住民不安が高まったことを受け、佐賀県や鹿児島県でもこうした動きが出ている。

=公 約=

 「(安全性の確保には)技術的、専門的な見地から意見や提言を得ることが必要だ」。今年7月の鹿児島県知事選で、脱原発を訴えて現職を破り当選した三反園訓(みたぞのさとし)氏は、専門家組織の設置を目指す理由をこう説明する。熊本地震後に反原発団体との政策協定を結ぶ中で、原発の安全性や住民の避難計画について議論する有識者委員会の設置を公約として掲げた。

 鹿児島県薩摩川内市の九州電力川内原発1、2号機は新規制基準の適合審査に全国の原発で初めて合格し、2015年8月から順次再稼働した。三反園氏は、定期検査のため停止した川内原発が再び運転を始めるにあたり、委員会の意見を踏まえた上で、県として意思表示する青写真を描く。

 東松浦郡玄海町の九電玄海原発3、4号機は、原子力規制委員会による再稼働に向けた審査が大詰めの段階。山口祥義知事は今年9月に「県民が不安に思うのなら、検討しなければならない」と述べ、専門家らによる第三者委員会の設置検討を表明した。再稼働の際に前提となる「地元同意」に関する可否判断の材料とするのが目的だ。

=寄 与=

 原発が立地する13道県で現在、専門家組織の設置がないのは、再稼働を検討していない福島県を除けば、鹿児島と佐賀の九州2県だけだ。愛媛県や茨城県、北海道は30年以上前に設置。原発事故以降には宮城県や石川県が新設したほか、北海道も電力会社や規制委による専門的な説明を、自治体に分かりやすく解説する「原子力安全アドバイザー」の制度を加えた。

 各道県が設けた組織が扱う内容は、住民側の要望など個別事情に合わせており、さまざまだ。事故時の避難計画が適切かどうかを助言したり、原発の安全性を検証し行政側に意見したりするケースが多く、施策面への寄与は小さくない。

=難 航=

 ただ、組織の設置には新たな予算が必要になるため、議会の同意が不可欠だ。鹿児島では知事就任から3カ月近くたつ今も三反園氏が設置時期を明言できない状態が続く。ある専門家は「厳しく審査できる専門家を招集するのは簡単でない」と指摘し、人選などを巡って調整が難航しているもようだ。

 新潟県の専門家組織メンバーの立石雅昭新潟大名誉教授(地質学)は、こうした組織で議論を深めていく重要性を強調し「委員会ができるまで原発の稼働は延期すべきだ」と行政や電力会社に慎重な対応を求めた。【共同】

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