JR九州(本社・福岡市)が東京証券取引所第1部に上場した。1987年の国鉄分割民営化から30年目の悲願で、駅ビル事業や不動産など経営多角化が功を奏した形だ。ただ完全民営化し、国の管理下から離れることで、赤字が多いといわれる地方路線がさらに整理縮小することはないのか。今後のかじ取りを注目したい。

 都市圏輸送や新幹線などの強みを持つ東日本、西日本、東海の本州3社と比べ、赤字ローカル線が多い九州、北海道、四国の「三島会社」の経営の厳しさは分割当初から指摘されていた。

 上場が本州3社よりも大きく遅れ、30年かかったとはいえ、国から完全に独立できたことは努力を評価していいだろう。

 経営内容をみると、その理由は分かる。2015年度の営業収益(売上高)は3779億円で、このうち、駅ビル事業やホテル経営、分譲マンション販売など非鉄道事業が60・3%占める。大分ではニラ、長崎ではアスパラガス栽培など農業にも取り組んでおり、多角経営はさらに広がりを見せる。

 一方、11年3月に九州新幹線(博多-鹿児島)の全線開業、観光客向けに超豪華寝台列車「ななつ星in九州」など新型車両を続々と投入しているが、本業の鉄道事業の売り上げが全体の4割を切っているのが今のJR九州だ。

 同社の好調さはターミナル駅がある博多で感じることができるだろう。新幹線全線開業にあわせオープンした新駅ビルには阪急百貨店などを誘致し、にぎわいを見せる。九州の玄関口となる新幹線駅がある強みを生かして、天神に流れていた買い物客まで博多で取り込んでいる。

 博多の成功体験をほかの県庁所在地でも進めており、鹿児島や大分でリニューアルした駅ビルが盛況だ。さらに熊本駅も大幅改修する計画という。観光だけでなく、流通でも存在感を示している。今回の上場による株式売却で得た資金を元手に、さらに不動産業に力を入れる方針だ。

 気になるのは選択と集中が進みすぎて、投資が収益が見込める都市部に偏り、地方が軽視されることはないかということだ。

 赤字ローカル線を抱える鉄道事業は年間100億円を超える赤字が続いており、非鉄道事業の利益で穴埋めしている。国の管理下では地方路線への配慮もあっただろうが、上場したことで株主重視の経営となれば、採算性を優先することにならないか。

 現状でさえ、JR九州管内の567駅のうち半数を超える290駅が無人駅となっている。さらなる合理化で、乗客や周辺住民の安全性や利便性が低下することがないように求めたい。

 取材したことがある唐津市にはホームまで階段が50段ある無人駅があった。エレベーターもなく、高齢者や妊娠した女性が大変な思いをしながら上っていた。ここに限らず、利便性を高める設備投資をすることで新たな客を獲得できる駅はあるのではないかと思う。

 博多駅の整備で福岡の一極集中はさらに進んでいる。しかし、地方が衰退すれば、鉄道利用者が減少し、JR九州にとっても自らの首を絞めることになる。地域とともに歩むのが鉄道会社にとっての生命線だということを上場しても忘れないでほしい。(日高勉)

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