「柴田夫妻コレクションを整理する中で有田焼の歴史や技法を学んだ」と話す鈴田由紀夫さん=西松浦郡有田町の県立九州陶磁文化館

鍋島直正像の原型を微調整する德安和博さん=佐賀市川副町のミゾタ川副事業所

練習に汗を流す副島亀里ララボウラティアナラさん=福岡市のさわやかスポーツ広場

来年1月から出身地・佐賀を皮切りに大規模な個展を開く池田学さん=米ウィスコンシン・マディソンのチェゼン美術館

 2016年度の佐賀新聞文化賞に、佐賀県立九州陶磁文化館館長の鈴田由紀夫さん(64)=学術部門、文化奨励賞は彫刻家で佐賀大学芸術地域デザイン学部教授の徳安和博さん(49)=芸術部門=が受賞した。特別賞には、リオデジャネイロ五輪7人制ラグビー男子日本代表の副島亀里ララボウラティアナラさん(33)=体育部門=と、超細密画で世界から高い評価を受ける画家の池田学さん(42)=芸術部門=が選ばれた。各分野で県勢の発展に貢献した受賞者の横顔を紹介する。

◇佐賀新聞文化賞 鈴田由紀夫さん(64) 九州陶磁文化館館長

■見せる工夫で楽しく

 

1980年の佐賀県立九州陶磁文化館開館と同時に学芸員となり、2010年から館長。4年間の県文化課勤務以外は、同館一筋に歩んできた。焼き物全般への幅広い知識と確かな鑑賞眼は、国内外の作家や専門家から厚い信頼を寄せられている。

 焼き物の魅力は「使われることで、人々の暮らしを豊かにしてきた歴史」を感じること。自らは江戸前期の洗練とは別の力強さがある作品にひかれている。

 陶磁器専門の施設として、伝統の技術の継承にも心を配る。窯元や職人との勉強会では、名品の復元などを手掛けた。「長い年月で磨かれた技術を後世に伝えるのも館の役割」と意欲を見せる。

 「若いころに手掛けた企画展はお客さんが少なかった。書生っぽさが抜けなかったのかな」と苦笑する。その反省から「見せる工夫」を館員と考え続ける。敷居の高さを感じさせないため、館入り口や展示室の要所要所では、館長がモデルのキャラクター「九さん」が出迎え、親しみやすさを演出する。

 「来館者に楽しんでもらうのが一番。その上で『勉強になった』と感じてもらえる館にしたい」

◇奨励賞 徳安和博さん(49)彫刻家、佐賀大学芸術地域デザイン学部教授

■人物像で具象の美追求

 故郷の長崎・南島原市は文化勲章受章者の彫刻家北村西望の生誕地で、幼少から偉大な先達の作品に触れていた。大学3年の時、イタリアの彫刻家ジャコモ・マンズーの作品に衝撃を受ける。像が輝いて見えた。そんな表現ができればと思いは強まった。

 「対象の形を正確に再現、映すだけでなく、形以上のプラスアルファを詰め込んで初めて作品となる」を信条に、人物像で一貫して具象の美を追求する。

 2008年から佐賀大に赴任。「母校の教壇に立てる。これほどの幸せはない」と言い、自身が知った彫刻の楽しさを伝える。多くの教え子たちが日展などで活躍している。

 来春、佐賀城本丸歴史館に建立する鍋島直正像の原型を手掛けた。いろんな人の思いを受け止めながらの制作。「責任ある名誉な仕事だった。学生たちに背中を見せられたかな」と1年がかりの制作を振り返る。今後は体全体の感覚をより重視したいという。“感覚的な先の作品”を理想に、少しでも過去の先人たちの仕事に近づきたいと語る。

◇特別賞 副島亀里ララボウラティアナラさん(33) ラグビー選手

■リオの歴史的勝利に貢献

 8月に開かれたリオデジャネイロ五輪にラグビー7人制日本代表として出場。初戦の強豪ニュージーランド戦ではトライを決め、歴史的1勝に貢献した。

 フィジー出身で2009年に来佐。建設会社で道路工事に携わりながらラグビーに取り組んだ。13年、佐賀県代表として長崎国体に出場し大会MVPの活躍で県チームの初優勝に貢献。注目を集め、日本代表の合宿に初招集された。

 「来日以来の夢」と話していたリオ五輪のピッチでは、全6試合に出場。強豪国を次々と破る快進撃を見せた日本代表の一員として、県民を大いに沸かせた。結果的にメダルには届かなかったが、準決勝では祖国フィジーとも対戦。「ほんとうに楽しい時間だった」と笑顔で振り返る。

 五輪後、福岡県のコカ・コーラレッドスパークスでプレーする。「日本代表で取り組んだ100%以上の努力を続けてチームに貢献したい」。フィジー仕込みの巧みなステップとパワーランで、国内最高峰のリーグに挑む。

◇特別賞 池田学さん(42)画家

■壮大なストーリー細密に

 文明の営みと自然とが融合する壮大なストーリーを丸ペンで細密に描いてきた。世界の美術館や美術関係者から「発想力や創造力が突出」「現代の日本美術をダイナミックに創造しており、世界に通用する」と高い評価を得ている。

 多久市出身。佐賀北高から東京芸術大・大学院に進んだ。2011年に文化庁の新進芸術家在外研修員としてカナダで制作に励み、壮大な自然と福島原発事故のメルトダウンとのイメージを絡め合わせた細密画を描いた。13年には米ウィスコンシン州のチェゼン美術館が「アーチスト・イン・レジデンス」(滞在制作)の第1号として招へい。3年をかけ、パネル4枚を組み合わせた大作(3×4メートル)を制作している。

 来年1月には佐賀県立美術館を皮切りに大規模な個展を開く。「これまで東京や海外での発表が多く、ずっと佐賀の人たちに生の作品を見てほしかった」。大作完成後も当面は米国にとどまる予定で、「波や水の表現の面白さに気付いた。次回はそれらをモチーフにするかもしれない」。

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