今年も曳山を曳く田中泰博校長。校長室の黒板には「曳山参観」、そして「唐津くんち」。学校にとっても一大行事だ=唐津市立第五中学校

3番曳山「亀と浦島太郎」(材木町)の先綱を曳く小学生や中学生=昨年の唐津くんち

◆田中泰博さん(54)

 唐津くんちまで3週間となった10月12日、唐津市立第五中を男性の一団が訪れた。総勢30人。生徒たちはいつにも増して緊張のよう。各町区の役員らによる「曳山(やま)参観」だ。

 7月と10月の年2回。授業を見学して意見交換する。「みんなよくあいさつするし、随分落ち着いてきた感じ」「7月はごみが散らかっていたけど、きれいになってますね」。そんな感想に案内役の田中泰博校長(54)は、生徒たちの成長と自覚を感じた。

■新採時魅せられ

 くんちには全校生徒の3割に当たる約120人が曳(ひ)き子として参加する。田中校長もその一人、曳き子歴30年だ。

 1986年、新採として赴任したのが同校。浜玉町出身で小学時代から浜崎祇園山笠の囃子方(はやしかた)に加わってきた。そんな「のぼせもん」が曳山を見て血が騒がないわけがない。PTA役員だった材木町の曳山幹部との縁もあり、翌年から3番曳山「亀と浦島太郎」を曳き始めた。

 以来、五中に通算8年、同じ曳山校区の第一中と合わせると22年。教員歴の3分の2以上を曳山がある中学校で過ごし、曳山と子どもたちを間近に見てきた。

■失った価値観

 「先生の言うことは聞かんでも、曳山の人の言うことは聞く」といわれる曳山組織の規律と統率。「縦社会」という言葉でくくると負のニュアンスも帯びるが、「くんちの3日間だけでなく、1年のさまざまな行事を通じた人のつながりの中で『唐津』『ふるさと』『わがまち』を大事に思うようになる」と言う。

 それは「現代の子どもたちが失っている価値観」であり、「地域という共同体の中に学校があって、生徒が大切にされている」と実感する。

 くんちが近づくと、校内はそわそわし始め、終わると数日間は虚脱感が漂う。「よそは中体連や体育祭が終わったら受験モードだけど、とにかく、くんちが終わらないと」と苦笑しながら「ただ、ここぞという時の集中力を養っている」。

 最終日の4日は振替休日にして迎える「ハレの3日間」。教師として、曳き子の一人として、くんちがあるまちに生きる生徒たちを今年も見守る。

   ◆  ◆

 唐津神社の秋季例大祭、唐津くんちが2日の宵曳山(よいやま)で幕を開ける。14台の曳山と5千人の曳き子が織りなす勇壮な祭りの裏には、出会いがあり、一年を曳山行事とともに生きる日常がある。その日々と思いを追う。

=連載・曳山と出会い 曳山と生きる(1) 唐津くんち2016=

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