初窯出しに向けた窯焚(た)きで、夜を徹して作業を行う職人たち=有田町赤絵町の今右衛門窯

■国策に揺れ、深まる混迷 

 夜明け前、まだ薄暗い窯場に深紅の炎が揺れる。西松浦郡有田町の今泉今右衛門窯。昔ながらの薪(まき)を使う窯では、職人たちが交代で40時間近く黙々と火の番を続ける。1300度まで温度を上げ、色絵磁器の重要無形文化財保持者(人間国宝)十四代今右衛門さんの作品を焼き上げる。

 有田町は今年、有田焼の誕生から400年の節目だった。人間国宝の井上萬二さんらによる年頭の碗灯(わんとう)献灯に始まり、国内外での展示イベント、10月の記念式典…。さまざまな形で伝統産業の存在感を示した。

 記念の年は、未来への夢を紡ぐ好機にもなった。磨き上げた技を生かした新たなブランドや商品が続々と、佐賀県が支援した事業から生まれた。窯業関係者は収穫を実感する。「意欲のある若手が育ち、町に活気が戻った」。陶都は熱を帯びたまま新年を迎える。

 佐賀県内を見渡せば、自然の脅威を痛感した一年だった。4月の熊本地震では、県内で最大震度5強を観測。1月の記録的大雪では、水道管の破裂などで暮らしが混乱した。

 国策絡みのニュースは途切れなかった。佐賀空港への自衛隊オスプレイ配備計画や玄海原発3、4号機の再稼働問題、諫早湾干拓事業を巡る和解協議、長崎新幹線に導入予定のフリーゲージトレインの不具合…。うずみ火のように問題がくすぶったまま越年する。

 米大統領にトランプ氏が選ばれたことに象徴されるように、海外ではポピュリズム(大衆迎合政治)や排外主義的な言動が野火のように拡大している。

 さまざまな事柄が混迷の度合いを深める中、私たちの選択と行動も、これまで以上に重みを増していくのかもしれない。

 新時代を開く窯場の火床のように未来は、穏やかに、明々と照らされていてほしい。希望に満ちた新年を願い、さようなら2016年。

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