不正アクセス事件を巡る第三者委員会の提言書の提出を受け、記者の質問に答える古谷宏教育長(奥中央)=佐賀県庁

 佐賀県の県立中学、高校生約1万4千人分の個人情報が流出した不正アクセス事件の発覚から4カ月。第三者委員会は27日に発表した提言書で、県教育委員会をはじめ、関係組織のセキュリティー意識の欠落を厳しく批判した。古谷宏教育長は「職員全員で改革に取り組み、信頼を回復したい」と強調したが、責任の所在はあいまいなまま。現場の教員には「現場任せに終わってしまうのではないか」と不信感もくすぶる。

 「例えば『赤信号で(横断歩道を)渡ったらいけない』という当たり前のことも分かっていなかった」。第三者委の内田勝也委員長は会見で、パスワードの管理方法など教職員の情報セキュリティーに関する知識の乏しさをこう表現した。

 県教委は教育情報システムの運用に関し、現場の教員への研修やサポートを行ってきたが、利活用だけを目的にしていた。セキュリティーに特化した研修や外部からの指導は事件発覚まで全く実施しておらず、各学校が使い勝手のいいように運用していたという。

 古谷教育長は「職員の意識改革が最重要」とし、これから研修を重ねていくことで「セキュリティー文化」を根付かせていくと強調した。ただ、大量の個人情報を流出させた責任の所在はあいまいなままで、処分については自身も含め「考えていない」と明言した。

 県東部の高校でICT教育を担当する男性教諭は「再発防止には教育委員会との連携が欠かせないが、問題だった点を掘り下げずに進めても学校現場に不信が募る一方」と指摘する。

 事件発覚後も教育委員会から具体的な説明はなく、パスワードの管理の徹底やデータの持ち出し禁止などを一方的に指導するばかり。「現場への押し付け体質は今も変わっていない」

 一方で、情報が流出した高校の校長は反省を口にした。「業務の効率化などメリットばかりを考えて、セキュリティーに対する職員同士の共通認識が十分ではなかった」

 個人情報の扱い方を定めた校内のガイドラインは8年前に作成されたが、チェックは年々なおざりになっていったと感じている。それは教育情報システム導入後も見直されなかった。「ガイドラインを作っても、慣れとともに形骸化しかねない。今後は、継続的な意識付けの機会をどう設けるかが重要になってくる」

 被害を受けた学校の一つ、武雄高校の山口孝校長はセキュリティーの重要性を強く認識しながらも「そのためにICT機器が使いづらくなってしまうと、ほとんど使わなくなってしまう」と、現場が求める利便性を損なわないように県教委に注文する。「難しい要求だとは思うが、安全性をきちんと担保した上で、利用しやすいような対策を講じてほしい」

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