プロドラマーとして活躍する波多江健さん。CHEMISTRYやRIPSLYME、倖田來未など幅広いジャンルのアーティストのツアーやレコーディングに参加している

集会場で采配作りに取り組む波多江健さん(右)。唐津くんちは「チームワークの理想」と語り、準備段階から携わる=唐津市京町

◆波多江健さん(47)

 今週23日、唐津市京町商店街の集会所。曳山(やま)掃除を終え、集まってくる曳(ひ)き子たちの中に、東京でプロドラマーとして活躍する波多江健さん(47)の姿があった。山から切り出してきた竹に和紙を結び付け、世話になった人に贈る「采配」を黙々と作る。くんちの準備段階から関わるようになって5年目になる。

■唐津っ子

 郊外の菜畑生まれで、京町に親戚がいる縁で小学6年から12番曳山「珠取(たまとり)獅子」を曳く。物心ついた時には囃子(はやし)のまね事をしていたという根っからの“唐津っ子”だ。

 「父は高校の校長で、自分も地元で教師になるか就職して、曳山の世界に入るつもりだった」という。だが佐賀大入学後、憧れのジャズドラマーにレッスンを受けたことを機にプロを目指そうと決意。米・ボストンのバークリー音楽大学に留学し、そのまま7年間、くんちからも離れた。

 毎年、50万人の観光客でにぎわう唐津くんち。ただ、くんち自体はあくまで「神事」だ。曳き子たちは本番の3日間だけでなく、年間を通して曳山行事に携わる。

■音楽の仕事

 4月の春季例大祭、くんちに向けて心身を清める夏の「幕洗い」、10月に入ると囃子の練習が始まり、初くんちや本殿祭もある。

 ツアーに同行し、録音スタジオで演奏する音楽生活の中で、スケジュールを調整し、節目の行事には顔を出す。この半年間、くんち関係での帰郷は6回。今月はすでに3往復した。

 そんな波多江さんを「今は誰もお客さん扱いしない。ここにいて当たり前」と若者頭の山田信二さん(46)。「準備から関わるからこそ、3日間が何倍にも楽しくなる」とも山田さんは語る。

 「音楽の仕事と一緒なんですよ」。波多江さんはくんちをそう表現する。曲の構想を練り、音を出し、リハーサルを重ねて変更を加える。本番は華やかで一瞬。そこですべてを発揮するため時間をかけて丁寧に準備を積み重ねる。

 「チームの一員として責任を持ち、自分のパートを務める。互いをリスペクト(尊敬)する気持ちはくんちから学んだ」

 くんちが終われば、人気ヒップホップグループのツアーが控えるが、「後片付けまでがくんち」。今年も翌日の曳山掃除まで勤め上げ、帰京する予定だ。

=連載・曳山と出会い 曳山と生きる(2) 唐津くんち2016=

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