文化勲章の受章が決まった中野三敏さん

■「後ろ向きに前へ」評価

 文化勲章の受章が決まった九州大学名誉教授の中野三敏さん(80)=武雄市出身、東京都在住=は、日本近世文学研究の第一人者で、「右に出る者がいない」と言われるほど江戸時代の書物に精通する。今年に入ってからも精力的に著書を刊行するなど学問への意欲にいささかの衰えも見られない。1面参照 

 中野さんは1935年生まれ。父は初代武雄市長の中野敏雄氏。中学卒業まで武雄市で育った。早稲田大大学院修士課程修了。『戯作研究』で81年度サントリー学芸賞を受賞した。従来、江戸文化は前期と後期にピークがあるとされていたが、文化的谷間とみられていた18世紀こそが前期の伝統文化と後期の振興文化が融和した開花期だったことを、徹底した文学、人物研究から明らかにした。

 最近、やや体調を崩したということで長男学而(がくじ)さん(44)を通し、受章のコメントを寄せた。

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 私などより中村幸彦先生(元九州大教授、国文学)がおもらいになっていればよかったろうと思いますが、生まれついての天邪鬼(あまのじゃく)で江戸時代に向かって「後ろ向きに前へ」進んで参った結果をこのようなかたちで評価いただけて、大変うれしく思っております。これまで私を支えてくださった多くの皆さまに心より感謝いたしますとともに、これからも、少しでも多くの方々が実際に和本を手に取って、くずし字の文化が消滅してしまわぬよう未来につないでいただきたいと願うばかりです。

 持病の喘息(ぜんそく)には悩まされていますが、今年初めに居を福岡から東京に移して治療を続けながら、4月には和本道のさまざまな恩師との思い出をつづった『師恩』(岩波書店刊)、9月には写楽についての既刊の拙著の中公文庫版『写楽』を出していただきました。当面は選(え)りすぐりの蔵書の目録を完成させたいと思いつつ、できればこれまでの仕事の総括もと考えています。

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