「日本人が忘れてしまったこと」のテーマで講演する宮田修さん=鳥栖市のホテルビアントス

九州医療専門学校学園長 温湯勝相さん

■「日本人が忘れてしまったこと」命引き継ぐ気持ちを

 佐賀新聞社主催の鳥栖政経セミナー・唐津政経懇話会(13・14日)で、元NHKアナウンサーで宮司の宮田修氏(69)が「日本人が忘れてしまったこと」と題して講演した。戦後、「中今(なかいま)を生きる」という伝統的な考え方を忘れたことによって「命を引き継ぐというマインドがなくなった」と指摘し、それが少子高齢化にも影響しているとの考えを示した。講演要旨を紹介する。

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 アナウンサーはいつも時間を厳しく守らなければならないなど、とてもストレスが多い。秒針のない所へ行きたいと思い、30年ほど前、千葉県の古民家を借りたら、たまたま大家さんが神主さんで後継者がいなかった。全く関心がなかったが、「人助けだと思って」と頼まれた。

 通信教育で2年かけて資格を取った。仏教ではお経を読むし、キリスト教には聖書があるが、神道にはそういう経典がない。それで先人が遺してくれた古事記や日本書紀などの歴史書や万葉集などの歌集から、さまざまなことについて日本人がどう考えてきたかということをくみ取って勉強する。

 その中で、伝統的な日本人の考え方を忘れてしまっていることを知った。それが「中今を生きる」という言葉だった。

 命は父母、祖父母から引き継ぎ、子や孫へとつないでいくものだという思想で、私たちはその命のつながりの中の「今」を生きている。命は決して自分だけのものではなく、子や孫へ引き継いでいくべき責任があると考えていた。

 こうした命のつながりを戦前はみんなが知っていた。しかし、戦後の日本人は誰も知らない。少子高齢化が大問題になっているが、これは若い人たちに命を引き継いでいくというマインドがないためだ。

 私は昭和22年に9人兄弟の末っ子として生まれた。父は東京で写真館を経営し、大変繁盛していたが、昭和20年3月の東京大空襲で焼けてしまった。暮らしは大変厳しくなり、普通なら9人目の子どもは欲しがらないが、両親が命をつないでくれたおかげで、私がいる。今、私は両親にとても感謝している。

 戦後は、戦前に考えていたこととは全く違うことを教えられ、伝統的な考えを忘れてしまった。こうしたことを口にするとすぐに時代遅れといわれるが、私はもう一度、「中今を生きる」という考え方を取り戻してほしいと思っている。

=講演を聴いて= 九州医療専門学校学園長 温湯勝相さん

 テーマが分かりやすく、元NHKアナウンサーと神職というユニークな経歴もあって面白かった。核家族化が進み、生活様式も便利になるなど世の中が変わってしまい、今さら100年前に立ち返ることは簡単にはできない。ただ、考えさせられた点もあり、日本人が忘れていることを子どもたちに伝えていくことは大切とも感じた。

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