日本を代表するシェークスピア俳優だった平幹二朗(ひらみきじろう)さんが、演出家の蜷川幸雄(にながわゆきお)さんの後を追うように天国へ旅立った。「僕はあなたから褒め言葉を引き出したくて熱演に熱演を続けた」。盟友を送り出した弔辞はわずか5カ月前だった◆出会いは自身が主演を務めた刑事ドラマ。1話限りの犯人役だった蜷川さんに「あなたの舞台に出してほしい」と相談した。当時すでに大河ドラマ主演を務め、浅利慶太(あさりけいた)さんが演出する舞台でも主演だった◆蜷川さんは役者としての格が大きく違ってもお構いなしに演技に注文をつける。平さんはその姿勢を信頼した。「器用でなかったので、役の心をつかみ、力強さで表現した」(『蜷川幸雄の仕事』)。その熱量が蜷川さんが目指す新しい演劇に必要で、二人で次々と作品を世に出し、海外公演も成功させた◆肺がんを患ったが克服し、舞台やドラマの仕事を続ける。「いっぱい出て、いっぱいしゃべりたいから、小さな役が来ないように祈っている」。生涯現役というより生涯主演志向。鋭い眼光と力強い声は脇役でも存在感が光った◆双子の子がいる。長男平岳大(ひらたけひろ)さんが俳優の道を選んだことで先輩として助言した。亡くなる前日は初孫となる長女の子を初めて抱いた。享年82。孤高の雰囲気が漂う名優は家族のぬくもりを感じながら人生の幕を下ろした。(日)

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