8年前の米大統領選は福岡市の米国領事館で、開票が進む現地からの衛星中継を見た。日本人大学生を大勢招いて民主党のオバマ氏と共和党のマケイン氏との模擬選挙も行い、ともにアメリカの民主主義を体感しようという雰囲気だった◆Yes、we can(そうだ、私たちにはできる)-。あの熱狂は何だったのだろうか。オバマ氏は勝利後、リンカーンの名演説を引用して「人民の人民による人民のための政治は地上から消滅していないことが証明された。これはあなた方の勝利です」と訴えた。演説が国民を鼓舞する力を世界に示した◆米大統領として初めての被爆地広島訪問など彼しかできない行動は多かったと思う。ただ、就任1年で受賞したノーベル平和賞に値する成果だったか、評価は難しい。世界で続く内戦やテロを見れば、リーダーシップに物足りなさを感じる。米国内の経済格差も深刻なままだ◆新しい大統領の選出で仕切り直しをという期待もあっただろう。だが、その選挙戦はあら探しが目立ち、投票日が近づいても終わる気配はない。中傷合戦に辟易(へきえき)して、クリントン氏、トランプ氏の「どちらも嫌」の声は少なくない◆8年前は人種の壁を越えた選挙結果に「これが米国の民主主義」と涙した領事館スタッフもいた。今度はどんな思いで見つめているのだろうか。(日)

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