「昔の作品の復刻は、勉強になることばかり」と話す円田光正さん=有田町の香蘭社赤坂工場

明治のデザインの復刻品を持つ円田光正さん。「商品にするには何十枚でも同じ絵柄にしなければならない」と話す=有田町の香蘭社赤坂工場

■意匠復刻、明治に学ぶ

 素焼きの大皿に迷いなく細い筆が進む。見本と寸分たがわぬ線書きが、次々に大皿を埋めていく。香蘭社に勤める円田光正さん(56)は、有田焼創業400年を記念し、同社が進める明治期のデザインを復刻した商品作りに取り組む。「昔の作品を再現する仕事は勉強になることばかり。30年以上も下絵付けしているのに、『こう描くんだ』と思ったりしてね」

 「こんな物がある」と取り出したのは、高さ30センチほどの染付のつぼ。青一色の濃淡で全面に花や葉などを描き、ほとんど余白がない。「筆先の毛1本だけで描いているほど細い線なのに力がある。そんな線を生み出すのが目標」。今にも飛び立ちそうな鳥、繊細な花弁の表現…。先人が残した高い技術を目の当たりにし、職人魂を燃やす。

 父は下絵付けの現代の名工に選ばれた義行さん。幼いころから、家でも作業する父の姿を見てきた。「見慣れているせいか、染付が好き」。父と同じ職業を選ぶのに迷いはなかった。

 仕事の上で大切にしているのは「集中力」。「商品だから10点でも20点でも同じように仕上げなければならない」と線の太さ、色の濃淡に気を配る。恒例の有田陶器市では店頭で接客する。「お客さんにプリントですかと聞かれる。手描きだと伝えると驚かれるよ」と正確な仕事ぶりを誇る。

 人と話すのが好きで、有田町が東京や大阪などで開いた「400年の魅力展」では、絵付けの実演に参加。「やり方を聞く人は多い。有田焼に興味を持ってもらえたようでうれしくなる」と振り返る。

 同僚の多くは年下。「若い人は焼き物が好きで熱心な人が多い」と感じる。「基本を学べば一定の仕事はできる。でもその先の表現力を身につけるには、自分で努力するしかない」と、若いときに昔の作品をじっくり見てほしいと助言する。「経験を積まないと分からないこともあるけど、下地になるのは若いころの勉強」と力を込める。

 自らの作品を作るときは、太い線で大胆に描く。特に蛸(たこ)唐草文様の動きのある表情が気に入っている。「仕事で細く緻密に描く反動か、フリーハンドでのびのび描く」。復刻に取り組む真剣なまなざしと打って変わって、笑顔を見せた。

■プロフィール

 えんだ・みつまさ 1960年有田町白川生まれ。武雄高卒業後、県窯業試験場(現・県窯業技術センター)で絵付けを学ぶ。86年、香蘭社入社。2002年に一級技能士、06年に伝統工芸士(下絵付け)認定。

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