ぷりぷりの食感に、口いっぱいに広がる海の恵み-。しばらく食卓に上っていないアゲマキが懐かしい。塩焼き、バター焼きがたまらなく食べたくなる◆かつて取材した旧南有明漁協(白石町)が、半世紀ぶりにアゲマキの養殖を復活させたのが1983年ごろ。天敵のワラスボの食害を防ぐために海砂を潟土と混ぜ、種の貝を入れて育てる。10センチほどの大きさで出荷した。大成功し、東京の郷土料理店でも人気メニューになるほどだった◆しかし、やがて育ちが悪くなり、死滅する。89年に養殖は終わってしまった。漁業者には夏場の貴重な収入の道だったのに、何とも惜しいことである。有明海のアゲマキ漁獲量は94年からゼロ。ウイルス性の病気説、農薬説があったが、原因は不明だ◆それが鹿島市沿岸で増えているという。県有明水産振興センターが続けてきた稚貝の放流が功を奏し、まいた貝が親になってその子孫が見つかっているそうだ。放流した場所以外でも育っている。このところ、いい話があまりなかった有明海だが、久々に明るいニュースである◆同センターは「復活の兆しと言ってもおかしくない」と言う。かつて前海もののエースにと期待されたアゲマキ。なかなか息を吹き返してこないタイラギとともに、昔の姿に戻るのが待ち遠しい。貝も取れてこその宝の海だ。(章)

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