JR鳥栖駅の橋上駅への建て替え決定を受けて、現駅舎の文化財的価値を検証している鳥栖市文化財保護審議会がこのほど、「価値が高い」として「現地保存」を提案する方針で一致した。市が今後、駅周辺再開発と駅舎の取り扱いについてどう折り合いを付けるか注目したい。

 前回の審議会では駅舎の調査結果について報告があった。文化財的価値については明治36(1903)年建築で当時の原形をとどめ、明治期の洋風建築を知ることができる九州で最も古い駅舎の一つと評価し、鉄道を軸に発展してきた鳥栖の象徴であると位置づけた。

 市教委が全国15の古い駅舎の活用事例について、現地保存、移築、一部部材を活用したイメージ再現、資料の保存・展示の四つに分類して長所、短所を含めて例示した。併せて、鳥栖駅舎を現地保存した場合の課題に触れ、これから進める駅周辺整備の土地利用が制限され、耐震、防火などの対策がさらに必要になることや、移築するにしても移築先の用地確保やその方法など多くの課題があることを説明した。

 では、駅舎を現地に残すと駅周辺整備の土地利用が制限されるとはどういうことか。駅前の現状は改札口付近の待ち合わせや歩行空間が狭い上に、バス停へ行くのに道路を横断しなければならなかったり、一般車の乗降場と駐車場も十分でないなどの課題がある。これらを解消するために計画されたのが、新駅舎を線路上に移築してスペースを確保し、駅前広場を一体的に整備する構想だ。

 だが、「現地保存」すると、構想は実現できずに「課題解消はできない」というのが市の見解である。

 元々、市は5月に審議会に文化財的価値の検証を諮問した際、保存活用策を複数案提案してもらって対応策を探ろうとしていた。が、審議会が「現地保存」のみを打ち出したため戸惑っている。

 市民の意向が気になるが、市の昨年9月の駅利用者アンケートでは4割が「現駅舎に愛着を感じる」と回答。一方で、利便性の高い新駅舎を望む声もあり、さまざまのようである。

 さらに市の財政見通しは、駅と線路で分断されてきた東西の市街地を新しく道路で結び、企業誘致のための産業団地を整備するなど大型事業がめじろ押しで厳しい。駅舎の保存には、大きなコストをかけづらいというのが本音のようだ。

 新駅舎の完成時期は未定とされているが、相当の時間が見込まれ、それまでは現駅舎の利用が続く。コストも踏まえながら駅舎への愛着をまちづくりにどう生かすか、しばらく協議を重ねてみてはどうだろうか。(高井誠)

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