水揚げされたナルトビエイを計量する漁協職員=藤津郡太良町の県有明海漁協大浦支所

■食害1200トン、稚貝全滅も

 有明海でタイラギやアサリなどを食い荒らすナルトビエイ。漁業者による駆除が進められ、食害量が年々減少していたが、ここ3年は再び増加の傾向を見せている。佐賀県による今年のタイラギ生息調査では、食害が原因とされる大量減少が確認され、依然として猛威を振るっていることが判明した。漁業者や水産関係者は、駆除の取り組み体制や沿岸4県の連携の強化を訴えている。

 九州農政局の調査によると、ナルトビエイは2008~10年に40~50万個体が来遊し、水産価値の高い二枚貝の食害量は2500~3千トンと推定されていたが、12年には来遊数が10万個体以下となり、食害量も200トンを下回った。

 しかしその後、来遊数が再び増加して15年度は23万個体となり、食害量は1200トンに。同局は「二枚貝の資源量自体が減っている状況で決して小さい被害とは言えない」とみる。

■漁再開に水

 ことし一部漁場で回復の兆しが見られ、5季ぶりの再開が期待されたタイラギ漁をしぼませたのもナルトビエイだ。県有明水産振興センターの定点観測によると、福岡県大牟田市沖は成貝の生息数が特に多く、今年3月には、漁許可の目安となる成貝の密度1平方メートル当たり1個を大きく上回り、同8個を確認した。

 その後、自然減少で同4~5個となったが、5~6月にナルトビエイによる食害が確認され、同1~2個へ減少。夏場に生き残った稚貝が成長して盛り返したが、再び食欲が旺盛となる9月下旬から10月中旬にかけてほぼ全滅した。周辺で粉々になった殻と海底をほじくり返した穴の痕跡が見つかっている。

 県や県有明海漁協は、食害が確認された時点で福岡県などに情報提供し、ナルトビエイ駆除などの対策を再三にわたって要望。だが、クラゲやワタリガニの漁期ということもあり、実効性のある対策はとられなかったという。佐賀県側の水産関係者は「残念というほかない」と唇をかむ。

 「昨日はよく取れたけれど、今日は全然」。10月下旬、藤津郡太良町の大浦漁港。水揚げしたナルトビエイはごくわずかで、漁業者たちは苦笑いを浮かべながら計量用の網に放り込んでいった。常に餌を探して広い範囲を回遊する上、警戒心が強く、捕獲が難しいことも、再び食害量が増えた一因に挙がる。

■駆除へ連携を

 駆除は、国の補助事業などで佐賀県を含む沿岸4県が行っているが、県や地域によって取り組みの熱意に“温度差”もある。県有明海漁協の田上卓治専務理事は「有明海沿岸で連携し、漁業者がナルトビエイの駆除や対策に取り組みやすいよう、制度上の工夫も必要」と話す。

ナルトビエイ 熱帯域のインド洋原産で、太平洋や東シナ海などの暖かい海域に広く分布する。平均体重はオスで6キロ、メスで12キロ。有明海でも1990年代後半から頻繁に現れるようになり、温暖化による海水温の上昇が原因といわれている。海水温が20度近くになる5月頃に有明海に侵入。繁殖行動をした後、海水温が下がる10月下旬~11月上旬に越冬のため南下する。来遊した直後と外海に旅立つ前に捕食活動が活発化するため、6月と10月に駆除が重点的に行われる。

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