「佐賀県『食』と『農』の振興計画2015」に照らし、その実施状況をまとめた報告書(県農業白書)が公表された。A4用紙で100枚近い報告書を読むと、佐賀農業の現状や課題が明確に浮かび上がる。環太平洋連携協定(TPP)の発効が現実味を帯びるなど、農業を取り巻く情勢が一段と厳しさを増す中、関係者が思いを一つにし、「稼げる農業」を追求する契機にしたい。

 県は2005年、「さがの食と農を盛んにする県民条例」を施行するとともに、最初の振興計画を策定した。10年後の佐賀農業のあるべき姿を描き、施策の効果を検証するため、5年を目安に見直しを加えている。11年版に次ぎ2度目の改定となった15年版では、稼げる農業の確立と農村振興を目指し、県産農産物のブランド力向上や販路拡大、担い手育成などの各分野で、成果指標となる43項目それぞれに数値目標を設けている。

 今回の白書は、15年版になって最初の1年をまとめた報告書である。10年後とした数値目標を早くも達成した項目も幾つかある。

 その一つは、販路拡大を見据えた青果物輸出である。15年度の輸出量は前年の11・4トンから51・7トンまで伸び、10年後の目標としていた30トンを一気に上回った。県農政企画課は「佐賀牛輸出で実績のある香港で、県産品を求める声が高まった」と説明する。マスカットや小ネギ、アスパラガスなどの質のよさが高く評価されている。

 競争力の分野では、最新データでコメの生産費削減が前年の全国5位からトップに躍り出た。集落営農組織で機械利用の共同化が進んでいるためで、水田の耕地利用率も全国トップを維持している。このほか、肥育素牛の県内自給率が前年比1・8ポイント増の25・7%になるなど、目標に向けて前進したものが43項目中33項目あった。

 こうした中、やや足踏みを感じさせたのは農産物の加工・販売を広げる「6次産業化」の推進である。15年度に国の総合化事業計画に認定された事業はなく、累計件数は18件にとどまった。18年度末までに62件、24年度末までに100件に増やすのが目標で、県は研修会や商品開発支援に本腰を入れており、本年度に入ってからは2事業が認定されている。

 農業産出額については、現在の約1200億円を今後10年で1300億円程度まで引き上げることを目指す。県農政企画課は、行政があえて「稼げる」という表現を使った理由として「稼げるという言葉には努力の意味が含まれる。関係者一体で佐賀農業を魅力あるものにしたいという思いを込めた」と語る。全国的に産地が縮小する中、販売先の確保にはある程度の数量を供給できる力が必要で、「農業を人材が根付く産業にするため、目標達成に全力を挙げていきたい」と力を込める。

 いま国会では、TPP承認案と関連法案の審議がヤマ場を迎えている。法案成立はほぼ確実な情勢で、より大きな国際化の荒波が農業分野を襲うだろう。農業は佐賀をはじめとする地方の基幹産業であり、地域力の保持に果たしている役割も大きい。国の支援は当然として、これまで以上の知恵と努力で乗り越えていかねばならない。白書を佐賀農業の“指南書”とし、さらなる振興策を導き出してほしい。(杉原孝幸)

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