NTT西日本佐賀支店長 池冨保さん

「若い世代の移住促進が自治体存続の鍵を握る」と語った慶応義塾大の樋口美雄教授=佐賀市のホテルニューオータニ佐賀

■「人口減少社会と地域経済」

 佐賀新聞社主催の佐賀政経懇話会と佐賀西部政経セミナー(10月26、27日)で、慶応義塾大の樋口美雄教授(63)が「人口減少社会と地域経済」をテーマに講演した。全国の市町村で少子化と人口減少が止まらず、存続が危ぶまれる“消滅可能性都市”について、「若い人の移住を増やすことが解決につながる」と指摘した。講演要旨を紹介する。

 人口減少問題の根は深い。税収の減少や国内総生産(GDP)の低下を招き、生産年齢人口といわれる15~64歳の人口が減少すれば国を支える労働力の低下が懸念される。日本の経済成長は、人口増加による豊富な労働力によるものだった。人口減少に歯止めをかけなければ、今後の経済成長は見込めないだろう。

 対策として、高齢者の就労支援が有効だと思う。高齢化社会は、長寿社会とも言い換えられる。現在でも60代前半の8割が何らかの仕事をしている。これから65歳以上にも働き口をつくり、深い知識や経験を社会に還元できるモデルができれば、労働力減少への一助になる。高齢者と若者世代が手を携えて労働する「1億総活躍社会」の実現こそが日本を救うだろう。

 総務省のデータでは2008年までは人口が増えていたが、40年には約1億700万人まで減少すると予測されている。多くの自治体が存亡の危機にひんすることが懸念される。今もその兆候はあるが、インフラが不十分な田舎から便利な都会で老後を暮らす高齢者が多い。地方自治体の対策としては、若い世代の移住者を増やし、その地に愛着を持ってもらい、税収による公共設備や行政サービスの充実を図ることだ。

 若い世代の人たち、とりわけ20~30代の女性を取り込むことが重要で、女性が家族を形成すれば人口増に直結する。若い女性にとって魅力的に映る自治体をつくることが、消滅可能性都市への対策になる。

 佐賀県全体の人口は、2040年には約68万人にまで減少するというデータがある。ただ、県内では、鳥栖市が40年時点で推計の人口増加率が高い。福岡市へのアクセスの良さや自治体の他県からの流入を促す行政サービスが功を奏しているのだろう。

 全国1700の自治体のうち、25%の自治体は人口減少が著しい。消滅可能性都市とされる自治体も多く、人に付随する産業も停滞する。地域経済が立ち行かなくなるリスクに備えるため、若者世代が暮らしやすい社会の形成に力を入れるべきだ。進学や就職を機に都会に移ることを食い止め、故郷に誇りを持ち、地元志向の若い世代を育てる地道な種まきが地方創生への道しるべになる。そのためには自治体や産業界が一丸となって、若者の地元定着に取り組んでいくべきだ。

=講演を聴いて= NTT西日本佐賀支店長 池冨保さん

 人口減少社会を喫緊の課題として捉え、自治体や産業界が連携して対策を講じることが大切だと思った。若い世代にとって住みやすいまちづくりが、自治体存続の鍵を握っている。NTT西日本も上峰町と包括連携協定を結んでいる。通信事業で自治体をバックアップし、地方創生の一助になりたい。

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