広陵(広島)との決勝で、左翼席へ逆転満塁本塁打を放った副島浩史さん(2007年8月22日)

体育教師として新たなスタートを切った副島浩史さん。指導者として甲子園に出場することが夢だ。=三養基郡みやき町の中原特別支援学校

■甲子園Vの主砲、銀行員から転身 指導者で聖地再訪を

 奇跡的な逆転満塁本塁打で球史に名を刻んだ強打者が「聖地再訪」を目標に再出発した。2007年夏、佐賀北高の甲子園優勝の立役者となった副島浩史さん(26)=佐賀市=は昨年、2年余り勤めた銀行を退職し、体育教師に転身。「いつかは監督としてあのグラウンドに立ちたい」。指導者としての夢を膨らませながら、教壇に立つ。

 副島さんは甲子園決勝の広陵(広島)戦で逆転満塁本塁打を放ち、チームを優勝に導いた。進学した福岡大でも、3年秋のリーグ戦で本塁打王と打点王の2冠に輝くなど活躍し、12年春に県内の銀行に入行した。

■情熱の高まり

 「目標の数字を達成するために職場が一丸となる。個人の力も、チームワークも必要な野球と共通する部分があった。どうすればお客さんの信頼を得られるのかを先輩から学んだり、自分なりの方法を考えたり。本当にやりがいがあった」

 丁寧で、親身になった商品説明がモットーの営業マンとして充実した日々を送っていた副島さんの心を揺さぶったのが佐賀北の後輩たちだった。

 大学4年の時、同校で教育実習をした縁で社会人となってからも野球部に顔を出していた副島さん。「何で教師にはならないんですか」「野球を教えたいと思っているんですよね」-選手たちの問いかけに、はっとした。

 大学入学後に痛め、手術した右肩の古傷もあり、本格的にプレーするのは大学までと決めていた。ただ「完全燃焼できたか、納得いくまでやれたか。自分自身、どこか逃げていたというか、少なくとも、挑戦心はなかったのかもしれない」。

 ともに全国制覇を経験し、その後、社会人野球に挑戦した佐賀北のチームメートや、甲子園で対戦した相手校の選手がプロ野球で活躍する姿を見るたび、白球への断ち切れない情熱の高まりを覚えた。

■成長に喜び

 「おまえの夢なら、全力で応援する」と背中を押してくれた上司や同期の仲間たちの温かい励ましを支えに、昨年7月、銀行を退職。今年1月から三養基郡みやき町の中原特別支援学校に講師として赴任、体育の授業だけでなく、ランニングや縄跳びといった朝の運動を担当している。

 昼休みは子どもたちに野球の魅力を伝えようと、キャッチボールなどで汗を流す。最初はグラブの着け方を知らなかった生徒がきちんとボールを投げられるようになり、バットで素振りもするようになった。今では「先生、やりましょう」と目を輝かせて子どもたちのほうから誘ってくる。そんな成長に喜びを感じる。

 そして、いつの日か、監督として再び甲子園のグラウンドに立ちたい。もちろん、母校・佐賀北ナインを連れて。「自分にとって永遠の大舞台。そこでノックを打ち、勝利監督インタビューを受けられたら」。県民、そして全国の高校野球ファンを熱狂させた劇的な本塁打。今度は教師、指導者という新たなフィールドで、大アーチを描いてみせる。

 ※ひたむきに、前向きに生きている人たちがいます。佐賀県内のそんな人たちにエールを送る企画です。(随時掲載)

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