衆院本会議に出席した安倍首相と山本農相=8日午後

 環太平洋連携協定(TPP)承認案の衆院採決の時期が政府、与党の当初想定から大幅にずれ込んでいる。山本有二農相発言の問題化に加え、国会運営の司令塔となる自民党国対の調整不足が露呈。採決を巡っても強硬姿勢と対話重視の間で揺れ「迷走」(同党中堅)したためだ。再三、衆院採決が先送りとなる状況に、連立を組む公明党の不満も募る。【共同】

 「速やかに審議を進めてもらえるよう丁寧に説明していきたい」。菅義偉官房長官は8日の記者会見で、TPPの早期承認を目指す政府の立場を強調するしかなかった。

▽最終ライン

 安倍政権は当初、11月1日までの衆院通過を想定した。条約案のTPP承認案は衆院議決が優先する「30日ルール」が適用され、衆院さえ通せば11月30日の会期末までに自然承認となるため、大きな目安だった。

 農相の「強行採決」発言、その後に前言を「冗談」と言及したことで野党が反発し、いったんは決まった11月4日の本会議採決も飛び、オバマ米大統領在任中の議会承認を後押しする狙いから米大統領選の結果判明前の8日採決を「最終ライン」(政府筋)とした。

 官邸の意向の実行に迫られた自民党の竹下亘国対委員長は4日に本会議採決の前提となる衆院TPP特別委員会採決に踏み切った。ただその後は一転、柔軟対応に転じて8日の本会議採決を断念した。若手議員の一人は「8日通過も実現しないなら、採決強行した意味はない」と話した。

▽投げやり

 自民国対の強気の運営に待ったを掛けたのは、大島理森衆院議長だった。特別委での採決強行の後、竹下氏を呼び、厳しい口調で「与野党でしっかり話し合ってほしい」と注文した。

 通常、国対と二人三脚で国会運営を進める佐藤勉衆院議院運営委員長(自民)も憤る。事前に4日の採決を知らされておらず、採決強行に関し「このような強引な例は(過去に)一回もない」と異例の苦言を呈した。

 自民党関係者は「これほど意思疎通を欠き、不手際が目立つ国対は前代未聞だ」と指摘。不満は公明党も同じで「自民国対は崩壊状態だ」(同党幹部)と容赦がない。

 背景にあるのは「国会開会中、いつでも問題は起きる。うまく対処し上手に日程を運ぶのが自民国対だ」(ベテラン議員)との思いだ。

 野党は勢いづく。民進党は「自民国対と衆院議運委員長の連携のなさが強行採決を引き起こした」(野田佳彦幹事長)と指摘。農相が辞任しない限り、不信任決議案を提出する構えを崩さない。

 TPPを巡る攻防が続く中、与党幹部は投げやりにつぶやく。「自民国対は、こんどは10日の衆院通過だと言うが、もう知らない」

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