九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)の3、4号機が、原子力規制委員会の安全審査に事実上合格した。再稼働に向けての最大のハードルをクリアした形になるが、最終的には原発が立地する佐賀県と玄海町の地元同意で決まる。山口祥義知事は新たに第三者委員会を立ち上げる考えを示しており、県民の安全を最優先して判断してほしい。

 玄海原発の安全審査は3年近く続いた。新規制基準は2011年3月の東京電力福島第1原発事故の反省を踏まえ作られており、規制委も九電がどれだけ地震や津波などの自然災害のリスクを重視しているかを注目し審査した。

 玄海原発の敷地内とその周辺には活断層はない。九電は規制委の指摘を受け、最大の揺れを想定した基準地震動は最大加速度540ガルから620ガルに引き上げ、基準津波も高さ3メートルから4メートルに修正した。机上の計算では、想定されるリスクに対応できる安全対策が施されたということなのだろう。

 もちろん、これで安全対策が万全というわけではない。原発事故時の避難計画は規制委の審査対象に含まれていない。再稼働している九電の川内原発(鹿児島県)や四国電力の伊方原発(愛媛県)では今も避難計画の問題点を指摘する住民の声が上がっている。

 佐賀、福岡、長崎の3県が連携して先月実施された原子力防災訓練では、広域避難の難しさが浮き彫りになった。30キロ圏住民への安定ヨウ素剤の配布に加え、マンパワーの不足が懸念される高齢者施設や病院からの避難など課題は多い。玄海原発の再稼働は早くて来夏というが、この時間を使って避難計画の精度を上げてほしい。

 山口知事は原発の安全性を十分に確認した上で、再稼働について容認する考えだ。そのために、原発に詳しい大学研究者や地元関係者らでつくる第三者委員会や、県内20市町の首長ら多くの意見を聞くという。

 玄海原発が4基全て停止してから来月で5年となり、地元経済界からは再稼働を望む声は強い。一方で、伊万里市の塚部芳和市長と神埼市の松本茂幸市長が「最終的には知事の判断に従うが、市民は不安に感じている」と再稼働に反対の考えを表明するなど、県内の声は賛否二分している。

 5年前の再稼働論議では、前知事と九州電力の不適切な関係が問われた「やらせメール問題」が起きている。山口知事は原発に対する県のスタンスに対し、県民の目が厳しいことも自覚しながら最終判断を下してほしい。

 九電は川内原発に続き、玄海原発の再稼働にめどがついたことで安堵(あんど)感が広がっているだろう。しかし、東京電力の福島原発の事故処理で明らかになったように、ひとたび事故を起こせば、廃炉や除染、住民への損害賠償など一企業では負担できない巨額な損害が発生する。

 これまで原発は発電コストが低いとみていたのだろうが、リスクの大きさを考えれば、原発の依存度を減らす経営を真剣に検討すべきではないのか。

 安全審査に合格する原発が続き、国の原発回帰は進む。しかし、新規制基準そのものは原発の安全神話が国民を大きく裏切ったために生まれたものだ。その重さを忘れてはならない。(日高勉)

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