あの歌声は、どこへ消えてしまったのか-。今は亡きマイケル・ジャクソンに、カラフルな歌声のシンディ・ローパー、ノーベル文学賞に決まったボブ・ディランも…。肌の色も性別も超えた彼らの歌声は見事に調和し、1985年の世界に響いていた◆アフリカの飢餓と貧困を救うために、米国を代表する歌手たちが歌った名曲「ウィー・アー・ザ・ワールド」。苦しんでいる誰かのために立ち上がろうというメッセージは、未来はきっと良くなると私たちに信じさせてくれた◆米大統領選が終わった。メキシコ国境に壁を築き、イスラム教徒を入国禁止にするなど、暴言を放ってきたトランプ氏が勝った。選挙戦を通じて私たちが見せつけられたのは、深刻な人種差別と女性蔑視、広がる格差など、病んだ米国の姿である◆トランプ氏の日本批判は、日米貿易摩擦の80年代に逆戻りしたようだった。当時大ヒットしたタイムトラベル映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に、ごう慢ないじめっ子が出てくる。そのモデルはトランプ氏だったと脚本家が明かしていたが、これほど不協和音に満ちた未来が待っていようとは◆世界が憧れた米国は、もはや見る影もない。トランプ氏は「すべての国民の大統領になる」と宣言したが、自らあおってきた憎悪と、深い断絶を埋められるだろうか。(史)

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