九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)の3、4号機が原子力規制委員会の安全審査に事実上合格した9日、原発周辺の住民の間では地元経済への好影響を期待する声が上がる一方、再稼働への流れが加速することへの危機感も広がった。

 「地元の人がたくさん原発関係の仕事に就いているし、再稼働すれば安定的に働けるようになるのでは」。玄海町仮屋地区の会社員男性(31)は今回の「合格」をこう評価した。玄海町は今月から、県と共同で原発から半径5キロ以内の住民を対象に、原子力災害時に甲状腺被ばくを軽減する安定ヨウ素剤の事前配布を始め、男性も家族5人分の薬剤を受け取った。「再稼働する以上は安全を踏まえてくれると思うし、何事もなく、これ(ヨウ素剤)を返すことができれば一番」

 原発停止で影響を受けてきた地元経済。玄海町旅館組合組合長の溝上孝利さん(58)は再稼働した場合の定期検査の宿泊客を見込みながらも、「動き出しても2基。以前の状況に戻ることはないし、原発以外の収益も模索していかないといけない」。スポーツ合宿誘致などに力を入れる考えを改めて示した。

 再稼働阻止に向け、今年9月に発足した唐津市の市民団体「玄海原発反対からつ事務所」の北川浩一代表(69)は、再稼働の手続きが進むことに危機感を募らせ「やれることは何でもやりたい」。来年1月の唐津市長・市議選でも「立候補者に質問状を出して回答を公開し、投票材料を提供していきたい」と強調した。

 30キロ圏の伊万里市で、小学生2人を育てている40代主婦は「新規制基準に適合したからといって、絶対に重大事故は起きないと言えるのか」と不安を拭えない。再稼働反対を主張する塚部芳和伊万里市長に対しては「今後もしっかり市民の不安を国や県、九電に訴えてほしい」と注文する。

 原発対岸の唐津市鎮西町串地区では10月、一部地権者のグループが使用済み核燃料の中間貯蔵施設を誘致する要望書を市に提出していたことが公になった。要望書は取り下げられたが、古舘満徳区長(62)は再稼働に伴う議論の再燃を懸念し「原子力の利用は最低限にとどめ、自然エネルギーの開発を急いでほしい」と話した。

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