収穫したばかりの米を検査する七島農産の七島和美さん(左)。TPPの先行きに不安を抱きつつも「前を向くしかない」と話す=小城市三日月町

 米大統領選で「環太平洋連携協定(TPP)離脱」を掲げるトランプ氏が当選して発効の見通しが不透明となった中でTPP承認案と関連法案が衆院を通過した10日、佐賀県内の農業・経済関係者からは戸惑いや採決を急いだ政府、与党の姿勢に疑問の声が挙がった。

 「農家にとって先行きが見通せないのは怖い」。小城市三日月町で米を中心に30ヘクタール超を栽培する「七島農産」の七島和美専務(47)は表情を曇らせた。大規模生産で販売・加工も手掛け、国が理想とする農業経営を体現しているが、「それでも稲作で稼ぐことは本当に難しい」と困惑する。

 JA佐賀中央会の金原壽秀副会長は「国会審議も大臣の失言問題ばかりで野党の追及も迫力不足。農業の本質が議論されたとは思わない」とあきれ顔。「トランプ氏当選で審議を急ぐ理由はなくなったはず。それでも採決をするのは政治のごう慢だ」と批判した。「TPP漂流で政権の成長戦略の前提が崩れる可能性もあり、規制改革推進会議が主導する農協改革が、より急進的なものになる恐れもある」と危惧する。

 TPPによる輸出分野への期待が一部にあった経済界でも模様見が広がる。佐賀銀行の陣内芳博頭取は「どうなるか分からなくなってきた。インバウンド需要を含めて県内経済への影響を見守る必要がある」と警戒。「加盟国に県内の自動車部品メーカーが進出しており、自動車産業が多い九州全体で影響が出る可能性がある」と懸念した。

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