少人数編成で授業を受ける子どもたち。教育の無償化は全国民から支持されている=ハバナ市内のニコラス・エステバネス小学校

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 昨年夏、54年ぶりに米国と国交を回復したカリブ海に浮かぶ国、キューバ。米国の経済制裁は議会で多数派の野党共和党の反対で続いているが、海外からの観光客は増えている。9月には安倍晋三首相も訪問し、日本との連携も強まった。ただ、次期米大統領にトランプ氏が就任することが決まり、米国との関係改善の機運に水を差す可能性もある。共同通信社の加盟社でつくる「論説研究会」に参加し、首都ハバナを先月訪れ、最新の現地事情を探った。

 首都ハバナ市内の革命広場に近いニコラス・エステバネス小学校。訪れた私たちは子どもたちによる歌やダンス、バンド演奏での歓迎を受けた。

 「レボルシオン」という革命の歌を声高らかに歌い上げた6年のマウリシオ・スワロドリゲス君(10)。「(革命指導者の)フィデル・カストロさんがいなかったら、この学校で勉強できなかった」と話してくれた。校舎の壁にはフィデル氏の写真が一面に張られている。革命の歴史は教育の深いところまで入り込んでいるように思えた。

 在校生は約400人。小学校は5歳から学び、1クラス20人ほどの少人数編成。より少ない人数でパソコンを教える教室や、言語能力が不十分な子どものための特別教室もある。ラドロンデゲバラ校長(50)は「キューバ全土で同じレベルの教育をしている。成績はつけるが、順番を公表することはしない」と言う。これも、この国の理念である「平等」の一環ということだろうか。

 この国では1959年の革命以降、教育は大学まで無料で、全ての子どもたちが教育の恩恵を受けられるようにしている。その上で一人一人の個性を伸ばそうという方針がある。

 革命前、貧しく、差別されたアフリカ系の子どもたちは、教育を受ける機会を持てなかった。今は誰でも同様に学び、優秀な人材は手厚く支援する政策だ。

 他のラテンアメリカ諸国からみれば、わずかに高かっただけの革命前の識字率が、今はほぼ100%を誇っている。世界の社会主義国を見渡すと、ベトナムに似ている。当然、優秀な労働力を生む原動力になっている。

 ラドロンデゲバラ校長が「教育の無料化は国民みんなに支持されている」と言うのもうなずける。新しい国づくりに欠かせないとみた人材の育成策は、フィデル・カストロ前国家評議会議長の理想を体現している。

 ■キューバの国勢 面積は本州の半分ほど。人口は約1100万人。1人あたりの国内総生産(GDP)7431ドル。公用語はスペイン語。元首はフィデル氏の実弟、ラウル・カストロ国家評議会議長。

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