■ウイルスが誘発するがん

 国際がん研究機関は6種類のウイルスを、ヒトの発がんとの関連が強い物質として報告しています。例えばB型およびC型肝炎ウイルスは肝臓がんを誘発することが知られています。それらのウイルスのうち、有効な抗ウイルス療法があるものは、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)や肝炎ウイルスなどです。

 子宮頸がんとの関連性が高いヒトパピローマウイルスに対しては極めて有効なワクチンが開発されましたが、残念ながらワクチンの副作用が問題視され、子宮頸がん予防対策はスピードダウンしてしまいました。

 九州地域に多いヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、難治性のリンパ腫や白血病を引き起こしますが、母乳から感染することから、妊婦検診で全妊婦さんに対してHTLV-1ウイルス検査が実施されています。母乳による感染予防対策により、対策前の10分の1に感染者を減らすことに成功しています。

 しかしながらHTLV-1ウイルスの感染は性交渉によっても成立すること、男性から女性にうつる確率が高いことなどが今年報告されました。この男女間の感染対策についてはエイズを引き起こすHIV-1ウイルスで懸命な取り組みが行われていますが、大変ナイーブな問題を含んでいます。結婚を控えた男女、子どもを授かることを希望する夫婦間など、いったん自分がHTLV-1感染者であることを知った瞬間から悩みを抱えることになります。

 このような相談しづらい悩みに対して私たちはHTLV-1専門外来を県の事業として設置しました。すでに約200人が受診され、さまざまな相談を受けてきました。今後も各保健福祉事務所と連携を取り、HTLV-1ウイルス対策を行っていきますので分からないことがあったらご連絡ください。HTLV-1専門外来 佐賀大学医学部附属病院、電話0952(34)3242、メールhttp://www.hospital.med.saga-u.ac.jp/htlv1.counselee/

(佐賀大医学部附属病院 検査部長・末岡榮三朗)

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