沖縄固有種のトウガンの種を生産する加温ハウスで野菜種子の国産化に向けた事業について説明する諸岡譲代表=福岡市早良区の西日本タネセンター

 野菜種子の国産化事業を目的に設立された株式会社「西日本タネセンター」(諸岡譲代表)が、生産拠点を福岡・佐賀県境の福岡市早良区に整備し、本格的に始動した。国の政策と連動した官民共同ファンドの出資も受けており、国産化の拡大と5年後の年度純利益3億8千万円を目指す。

 市場に流通している野菜種子は、国内メーカー製品も含めて大半が海外生産に依存しているのが現状。国産化により品質面の優位性を確保できるほか、優良品種は知的財産としての価値も高く、成長が見込める分野とみて参入を決めた。

 同センターは昨年3月、同市の種苗メーカー・中原採種場の出資で設立された。事業化に際し、官民で資金を提供する「農林漁業成長産業化ファンド」の出資金8千万円を受け、別に資本準備金として8千万円を用意している。地元農家から3ヘクタールの農地を借り受け、露地栽培と43棟のハウスでネギ類やキュウリなど年間約80種類を栽培・採種する。5年計画で農地20ヘクタール、ハウス200棟に拡大する方針だ。

 野菜種子の多くは、優れた特性を持つ固定種を交配したF1種だが、その果実から採種した子世代がF1種と同じ特性を持つとは限らない。そのため、F1種を安定的に生産し続ける技術と体制が不可欠で、同社がその機能を担う。

 沖縄トウガンなどの伝統野菜や、国や県の研究機関で開発された品種など希少なものも扱う。出資元の中原採種場の販路を通じて取引を拡大する。

 野菜種子の海外生産は、高温多湿な日本よりも気候条件が良く、広大な土地と安価な労働力を確保できる点で優位だったが、世界的な異常気象や人件費高騰で利点が薄くなっている。

 同センターでは、徹底した品温管理で発芽率を飛躍的に向上させており、歩留まりの良さで外国産との価格差を克服する考え。メード・イン・ジャパンへの信頼を背景に海外輸出も視野に入れる。

 九州農政局の元職員で、佐賀支局に長年勤務した経験を持つ諸岡代表は「育種は元々日本のお家芸ともいえる分野。外国企業の遺伝子組み換え品種が幅を利かすことがないよう、食の安全保障の観点から国家戦略として取り組むべき」と事業の重要性を強調。「佐賀での事業展開や農家の採種支援など、恩返しできれば」と力を込める。

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