音楽があふれるハバナ旧市街のレストランでは生バンドの演奏がつく。外国人観光客に人気だ

■国民間に格差少しずつ

 ハバナの旧市街は、スペイン植民地時代の情緒を残す。レストランでは生バンドの演奏が流れ、外国人観光客が昼食をとっていた。

 傍らでは音楽に合わせて踊るダンサーの夫婦。サルサやルンバを生んだ国らしく、華麗なステップを披露すると、客に帽子を差し出す。「サンキュウ」と笑顔。チップで生活をしているのだ。この街は観光で食べていると実感する。

 「欧州人だけでなく米国人なども増えているよ」とガイドのマリオ氏。そういえば、ハバナに向かう飛行機で何人もの日本人にも出会った。街ですれ違った東京からの20代の女性2人連れは「変わる前のキューバが見たかった」と口にした。街全体が博物館のようなハバナが、米国との国交回復で変わっていくと思っているのだろう。確かに、米資本の大手ファストフード店やコーヒー店が旧市街にオープンしたら興ざめだ。

 今、キューバは観光で沸き立つ。2015年の海外からの観光客は、前年比約17%増の約350万人だった。日本からは前年比82%増の約1万4千人が訪れた。治安が比較的に良く、キューバの人たちは陽気で明るく、どこか開放的だ。街角で、私たちにも「コンニチワ」と日本語であいさつしてくれた。

 政府は近年、経済活性化策を打ち出している。国営が多い中に08年、自営業拡大方針を発表し、10年には国家公務員を削減。自営業を広範に認めることにした。個人でビジネスを始める人が増えている。

 そこに光と影はあるようだ。レストランやタクシー、民泊など、観光客相手で外貨が入る人たちの暮らしは良くなっている。

 一方で、平均給与が月30ドル(約3千円)の公務員が多いこの国では、生活必需品を配給に頼る人は少なくない。コメや砂糖、塩などが手に入るハバナ市内の配給所。73歳の女性は「配給だけでひと月の食料を賄うのはとても無理。だけど私のような年金生活者には助かる。国には配給制度をやめないでほしい」と話した。平等をうたう国なのに、少しずつ格差が広がる。

 キューバは米国との国交回復を機に、一層の外国企業誘致に熱心だ。ハバナ郊外マリエル港の周辺を特区にして工業団地の造成が進む。しかし、従業員を直接雇用できないなど社会主義国特有の障壁もあり、投資はまだ少ない。

 物資の禁輸など米国の経済制裁は続く。観光や医療の輸出などサービス業頼みの経済は変わらず、苦境は続いている。「制裁が解ければ成長できる」。ガイドのマリオ氏の言葉は、国民の大方の見方かもしれない。

 ■キューバの経済状況 直近の平均経済成長率は2.2%。2016年は2.0%の予想。鉱物資源はニッケル、コバルト。主な貿易相手国はベネズエラ、中国、カナダなど。

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