日本教育工学協会・野中陽一会長

■総合的な情報化推進

 2020年度から実施される次期学習指導要領でICT環境の充実が掲げられ、個人レベルから学校、地域へと広がる総合的な情報化が求められている。研究開発は進んでいるが、これが日常的な活用や持続可能な実践につながっていない。ICT基盤を整備して地域格差をなくし、推進・支援体制を構築することが今後の課題だ。

 ただ、ICTの環境整備だけでは地域全体の情報化は進まない。地域や学校の情報化には戦略が必要だ。JAETは学校情報化認定事業の中で、しっかりとした戦略を持つ地域についても本年度から「先進地域」として表彰している。表彰した5地域は、行政や外部とも連携し、長期計画を掲げて情報化を推進するなどの特徴がある。

 例えば熊本県山江村は10年計画で情報化に取り組み、学力向上につながっている。茨城県つくば市は、各学校がカリキュラム全体を見据えたICT教育の全体計画をつくっている。小学校と中学校でレベルに差が見られず、地域全体の情報化に成功している。

 こうした取り組みには普通教室のICT環境整備が大前提となるが、整備は段階的に進めることになる。まずベースとなる電子黒板と教室用パソコン1台、無線LANがきちんと整っていないと、タブレット導入など次の段階に進めない。

 新たな学びの創造に向けては、日常の授業におけるICT活用の定着が重要。子どもたちが積極的にデジタル情報を活用する家庭と学校との間にある格差をなくすため、授業外でも主体的にICT活用を進めるべきだ。

■インタビュー

 野中陽一会長に佐賀県のICT教育について聞いた。

 ICTを使った情報活用の育成に必要なのは、子どもが端末を使い、収集し、整理し、表現するといった一通りのことをデジタルでできるようになることだ。

 そのためには、1人1台の端末を持っていることが結果的に大きな成果につながる。これは現在、全国各地でいろいろなアプローチで行われているが、佐賀県ほどの規模で行っているのは他にない。

 課題もあるだろうが、それを乗り越えて続けることに意味があり、今後、他県や大きな市などは佐賀での知見を生かし、問題の解決を図るようになるだろう。佐賀の取り組みや成果が土台となり、次の学習指導要領に向けたICT活用による授業改善、学力向上につながると期待している。

=ICT最前線・学びをデザインする 特別版=

◆佐賀県のICT教育環境◆

 佐賀県は2014年4月から県立高校の全入学生にタブレット端末を導入し、学習用パソコンを利活用した教育を始めた。今年は導入3年目で全学年に端末が行き渡った。電子黒板は13年度、県立学校の普通教室に整備済みとなっている。

 昨年10月、文部科学省が発表した都道府県別のICT環境の整備状況調査によると、教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数が全国平均は6.4人だったのに対し、佐賀県は2.6人でトップ。電子黒板のある学校の割合も、全国平均の78%を大きく上回る99%で1位だった。

■日本教育工学協会(JAET)

 学校教育に携わる教員や研究者、企業が教育工学研究を通して成果を共有し、普及・啓発活動をしながら教育の質の向上を目指そうと昭和46年に設立した。毎年、全国大会を各地で開いており、佐賀では初開催。

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