商業集積で吸引力が増す兵庫北地区。今年7月1日時点の基準地価は住宅地、商業地ともに県内最高の上昇率となった

 9月、佐賀市兵庫北地区の発展ぶりを裏付ける数字が公表された。県発表の基準地価で、同地区が商業地、住宅地ともに県内最高の上昇率を記録。商業地は前年比3・3%増で2年連続トップとなり、にぎわいの象徴とされてきた中心商店街(呉服元町)の地価を初めて上回った。

■一人勝ち状態

 伸び率が際立った基準地は、いずれもゆめタウン佐賀の近く。「まとまった土地はもうほとんどないが、一人勝ち状態のゆめタウンのそばでなら商売ができると、今でも進出意欲は衰えない」。佐賀市の不動産鑑定士後藤修さんは地価上昇の背景を読み解く。

 ゆめタウンがオープンした2006年以降、周辺には大型のスポーツ用品店や温泉施設、若者に人気のハウスウエディングができる結婚式場などが相次いで進出した。先行して開発が進んだ兵庫南地区からもベスト電器やユニクロがゆめタウンに移転。一帯の事業所数は524カ所と、この10年で2・5倍になった。

 10年前に開業したエディオン佐賀本店もその一つ。池上英治店長は「商圏の広さは他のグループ店の2倍以上で、長崎からも客が来る。ライバル店が目の前にあっても成り立つ市場がここにはある」と商業集積による集客効果を口にする。

 足元の地区人口は約9400人。店舗や事業所を囲むようにマンションやアパート、戸建て住宅が立ち並び、その数は開発前の15倍になった。「空き物件が出たらすぐに埋まる。ローン減税や低金利の追い風があるとはいえ、ここまでとは…」。国内大手住宅メーカーも需要の多さに驚く。

 同社が最近購入した住宅用地の実勢価格は坪25~28万円。「買い物は徒歩圏内。病院に温泉、学校もあり、30万円でも買いたいという客もいる」。一帯の地価は年々上昇、今ではJR佐賀駅周辺の住宅地に肩を並べるという。

■農地面影なく

 こうした吸引力をけん引するゆめタウンの来店客数は年間1300万人、売上高は260億円を上回る。直近の数字は非公表だが、週末の来店客数は「1日5万人」(テナント事業者)ともいわれ、前田孝支配人も「開業以来、売り上げ、客数ともに前年実績を下回った年はない」と明かす。

 区域の6割が農地だった開発前の面影はどこにもなく、節税対策などで農地を手放し、不動産投資に乗り出した地権者も多い。「まちと同じように住民の職種も大きく変わった」。佐賀市の不動産会社社長はこの10年の変貌ぶりをこう表現する。

 企業や消費者の注目がこの地区に集まる一方、市が活性化の基本方針に掲げたJR佐賀駅から県庁一帯の中心市街地の事業所は、この20年で2割減っている。

 歴史的景観が残る柳町の整備やハローワーク移転、バルーンミュージアムの建設…。こうした市のてこ入れが地価下落に歯止めを掛けているものの、「まちの重心が北東寄りに移ったとみるべき」と社長。人口減少が進む中、伸びる地域とそうでない地域の格差が県都でもはっきりしてきている。

■「商業地」格差広がる

 佐賀県によると、土地取引の目安となる県内の基準地価(7月1日時点)は、住宅地、商業地、工業地すべてで下落。全用途そろっての下落は17年連続となったものの、地価下落に歯止めが掛かってきている。国の住宅ローン減税や低金利政策などが需要を下支えしている。

 住宅地、商業地ともに4年連続で下落幅が縮小。「上昇」「横ばい」の地点は前年より20カ所増えた。住宅地の平均価格は1平方メートル当たり2万円で、佐賀市や近郊の街路条件の良い地域などで回復傾向が続いている。商業地の平均は3万9800円。幹線道路沿いは一定の需要があるが、中心商店街は空き地の一部が駐車場になるなど依然、引き合いは少ないという。

 住宅地の最高価格は「佐賀市赤松町」の6万9000円。文教地区で景観に優れ、中高年を中心に人気という。商業地は「佐賀市駅前中央1丁目」が20万5000円で23年連続でトップとなっている。

=まちが動いた ゆめタウン佐賀10年=(1)

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