九州新幹線長崎ルートに導入予定のフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)に関し、国土交通省は18日、目標としていた耐久走行試験の年度内再開を断念し延期することを決めた。改良した車軸の回転試験で再び不具合が発生した。今後、半年かけて検証走行試験を追加し、技術面とコスト面の改善を図り、来年5~6月ごろの再開を目指す。開発スケジュールについては「変わらないように取り組む」とした。

 国交省鉄道局の岸谷克己技術開発室長は、順調にいけば2022年度の「リレー方式」による暫定開業時に先行車を導入し、25年春以降に量産車で全面開業する全体スケジュールは変更しないことを強調した。半年の遅れは、耐久走行試験の期間を半年縮めて帳尻を合わせる考えを示す一方、現行計画を維持するには「(これ以上遅れると)余裕がない」と語った。

 国交省は18日に開いた専門家による技術評価委員会で、「現時点では耐久走行試験に移行する条件が満たされていない」と報告し、了承された。

 FGTの耐久走行試験は14年10月から始めたが、翌11月に車軸が摩耗するなどの不具合が判明し中断した。開発主体の鉄道・運輸機構が今年5月から屋内で改良した台車による検証試験を実施した。

 その結果、通常状態で摩耗は確認されなかったが、振動を想定して荷重を1・3倍に引き上げたところ、摩耗が発生した。時速280キロの高速走行試験でも安定性を欠く台車の揺れが確認された。これらの対応で車軸の交換やメンテナンスにかかる維持管理費が、既存の新幹線より2・5~3倍程度になることも分かった。

 岸谷室長は、屋内試験について「相当厳しい条件でやったが、その不具合が実際のレールを走ってどうなるのか改めて調査、確認していく」とし、来月から試験車両を熊本、鹿児島両県の九州新幹線や在来線を約1万キロ走らせ、耐久走行試験を再開できるかどうかを検証する。

 佐賀県の山口祥義知事は「FGTでしっかり開業されることを期待しているが、技術開発の難しさもあるのだろう。国交省からの説明を聞いて対応を考えたい」と述べた。

■解説 半年後に正念場

 フリーゲージトレイン(FGT)が抱える技術的な課題の解決を半年間先送りした18日の国交省の決定。「開発スケジュールに変更がないよう努める」と強弁する一方、現行計画を維持するには時間的に「余裕がない」とも漏らす。国はFGT開発に執念を見せるが、後がなくなってきた。

 新たに判明した車軸の不具合はどれほど深刻なのか。国交省の担当者は「想定していなかったのは事実だが、技術開発の過程ではありえること」と明言を避ける。一方で改善策は「一定の効果は認められ、方法自体は間違っていない」「想定の案がうまくいけばコストも相当削減できる」と自信ものぞかせた。

 安全性に関する問題だけに何よりも優先して判断されるべきだが、先送りによって長崎県側から全線フル規格を求める声が強まりかねない。佐賀県としては800億円超との試算もある追加負担が生じるフル規格は飲めるわけもなく、関西直通の経済効果を得られない「リレー方式」の固定化も認められない。FGT導入は譲れない一線だ。

 正念場は必ず半年後にやってくる。佐賀県は開発状況を注視しながら、何が県民にとって大切なのかを考えていく「判断力」と「交渉力」が求められる。

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