美術館再開のため、佐賀での初個展開催を手助けした実行委員のメンバー。前列左から2人目が両腕義手の芸術家大野勝彦さん=小城市牛津町の赤れんが館

熊本地震の本震で、「風の丘阿蘇大野勝彦美術館」が建つ丘が崩壊。本館の壁などにひびが入り、再開のめどは立っていない(提供写真)

■励まされた恩返し 佐賀のファン企画

 熊本地震で閉鎖に追い込まれた両腕義手の芸術家大野勝彦さん(72)=熊本県菊陽町出身=の詩作・絵画を集めた美術館復興のための作品展が19日、小城市牛津町の赤れんが館で始まった。大野さんの作品に励まされてきた佐賀県内の中学教師ら多くのファンが「恩返しをしたい」と協力し、県内で初めての個展開催にこぎ着けた。

 大野さんは45歳の時、農作業中にトラクターのごみを取り除こうとして、両腕を切断。入院して数日後には絵筆を取り、自らを奮い立たせる詩と絵を描き続けた。自費出版した『両手への賛歌』は話題を呼び、全国各地で講演会を重ね、2003年に南阿蘇村に個人美術館を建てた。

 大野さんの作品に感銘を受け、12年前から交流してきた小城市の中学教師・松田輝昭さん(59)は地震後に美術館を訪れ、崩壊した丘陵など被害の大きさに衝撃を受けた。大野さんは「一からやり直す」と、散らばった作品を義手で一つ一つ回収していた。その姿に、松田さんは「もう一度、この場で大野さんの作品を見たい」と思い、復興のための作品展を企画した。

 熱血指導で唐津西高、佐賀東高を甲子園に導いた高校教師の吉丸信さん(61)=北陵高=も協力者の一人。「夢はかなうもの/思いつよければ」。5年ほど前、雑誌で読んだ大野さんの詩にひかれ、試合のたびに反すうしてきた。「重要な試合に挑む時、大野さんの言葉に勇気づけられた」と作品の魅力を語る。

 今回の作品展では閉鎖中の美術館から持ち込み、阿蘇の大自然をモチーフにした風景画や季節の草花などをスケッチして詩を書き添えた85点を展示している。

 大野さんは「多くの人に支えられていることを知った」と感謝しながら、「被災は腕をなくした時と同じように、『最初からやり直せ』との試練だろう。松田さんや吉丸さんをはじめ、多くのファンのためにも、私の気持ちを絵と言葉で表現し続けていく」と、来春の美術館再開を目指して決意を新たにしている。

 作品展は午前10時から午後5時まで(最終日の27日は午後4時まで)。月曜休館。中学生以上500円、小学生300円。入館料はすべて美術館復興に充てる。23日午前11時と午後2時からは、大野さんの講演会も開く。

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