学生食堂のレジでミールカードをかざし、会計を済ませる岳尾友樹さん=佐賀市の佐賀大学本庄キャンパス

 昼休みの食堂は学生でごった返していた。佐賀市の佐賀大学本庄キャンパス。入り口に行列ができても、レジは思いの外、スムーズに流れていく。多くの学生が顔写真入りのカードを読み取り機にかざし、手際よく支払いを済ませていく。

 経済学部1年の岳尾友樹さん(19)ら学生たちが手にしているのは、食堂を営む大学生協が発行している「ミールカード」。1年分の料金を前払いすると、1日の限度額内なら自由に食べられる。岳尾さんの友人は冗談交じりに「餓死しないカード」とも呼ぶ。2004年度に導入され、14年度にはICカード化した学生証と一体化した。

 「振り込んだ食費は違うものには化けません」。親からの援助が遊興費に消えることはないと、生協は保護者にPRする。食べたメニューと摂取した栄養価を毎月、リポートとして親元に届けるのも売りだ。

 岳尾さんは福岡県の実家に帰ると、親からリポートを見せられる。「食べた野菜の量が少ない」といった頭の痛い指摘だが、リポートも親からの忠告もおせっかいとは思わない。「親はお金を出してくれている上に、こうしてアドバイスもしてくれる。感謝しているし、心配はかけたくない」

 少子化で、大学の総定員と志願者数がほぼ同数になった全入時代。手塩にかけたわが子が臨む入学式や年間行事に保護者が詰め掛ける光景は当たり前になった。子だくさんで、嫌でも順番に実家を出なければならなかった時代と異なり、自立の時期もあいまいになり、むしろ親や大学からの一定の束縛に安閑とする心模様がある。

 岳尾さんは大学近くのアパートで、憧れてきた1人暮らしをしている。九州を離れて遠方に進学するつもりはなかった。「すぐに実家に帰れる距離」だから佐賀大を進学先に選んだ。浪人せずに入学でき、親も満足してくれている。

 実家と友人がいる佐賀。「電車で数十分間移動すれば、両方の環境が楽しめる」。親元からの適度な距離感が、心地いい。

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