友人と談笑しながら学生食堂で昼食をとる岳尾友樹さん(右)=佐賀市の佐賀大学本庄キャンパス

ネット上で学習や生活状況を管理できる大学のポータルサイトに驚いたと話した鮫島真生さん=神埼市の西九州大学

■大学の管理に身委ね 

 4月からアパート暮らしを始めた佐賀大学経済学部1年の岳尾友樹さん(19)。1人暮らしの学生にありがちな生活の乱れはない。洗濯や食器洗いは面倒に感じるものの、週に1度の掃除を心掛け、友人からは「割ときれいだね」と褒められる。「汚くして困るのは結局、自分だから」

 仕送りだけでは生活費が足りず、コンビニエンスストアでアルバイトをしている。収入は多くはないが、「高校時代の小遣いを考えれば充実している」。大学の食堂が休みでミールカードが使えない土日の食費に加え、ゲームソフトや服の購入費用に充てている。

 佐賀大学生協が2015年に実施した学生の生活実態調査では、1人暮らしをしている学生の仕送り額の平均は月5万430円で、2006年から約1万2千円減った。一方、アルバイトをしている学生は全体の69・5%を占め、09年から約10ポイント上昇した。奨学金は5割が受給している。

 家計の厳しさがのぞく一方で、親に頼らず自活しようとする学生も増えてきているのだろう。そんな若者たちの自立の一助になるのかどうか、大学が導入している管理の仕組みは、キャンパスライフを計画立てたものにしていく。

 ミールカードと一体化したIC学生証は、講義の出欠確認にも使われている。教室の入り口にある端末にカードをかざし、「ピー」と鳴れば手続きは完了だ。

 この装置で一定期間、出席が確認できないと、大学から連絡が入る仕組みになっている。友人に学生証を渡し、「代返」ならぬ「代ピー」でごまかす学生がいる一方で、出欠を取らない講義でもカードをかざす学生がいる。ある教員は首をかしげる。「ピーとやるたびに、その行動が刷り込まれてしまっている」

 この教員は必修以外の講義では出欠は取らない、と宣言している。「講義の内容を評価するのは学生。面白くなければ有意義な別の時間の使い方を見つけてほしい」。そう思うからだが、学生からは「ちゃんと出欠を取ってほしい」と求められる場面もある。「制約や束縛を受けず、自由な裁量で学生生活を謳歌(おうか)する姿をイメージするのは、もう古いのかもしれない」

 「大学生なのに、ここまでしなきゃいけないの?」。西九州大学健康栄養学部1年の鮫嶋真生(まお)さん(19)は入学後、大学のポータルサイトに驚いた。講義の出欠から食事をしたかどうかまで毎日書き込む。

 サイトは5年前に開設された。ネットで学習や生活状況を管理できる。改善の記録を残すことで、社会人としての資質を磨き、就業力アップにつなげる狙いがある。成績にも影響するため書き込みは欠かせない。

 鮫嶋さんは親元を離れての1人暮らしで自炊をしているが、忙しい日は朝食を取らないときもある。サイトを開くと、食生活の状況が週単位で確認でき、省みる機会にはなる。講義に出る動機付けにもなっていて、「なければないで困るかも」。胸中は複雑だ。

 少子化で、学生獲得を巡る大学間競争は全国で激しさを増している。私生活にも及ぶ大学からのアプローチは、優秀な人材を一人でも多く実社会に送り出し、評価を得ようとする生き残り策でもある。「即戦力」を求める実業界の声とも無関係ではないのだろう。

 大学の掲示板を見に行かなくても、重要な連絡はそのうちメールで届く。佐賀大の岳尾さんは、こうした管理に全く違和感を覚えないわけではない。「自ら動かなくても済む生活に慣れてしまうと、『自由にやれ』と言われても、苦手になるんじゃないかな」

 大人って何だろう。18歳から選挙権が与えられ、成人年齢の引き下げも議論される時代。身近な若者たちの心模様を描きます。随時掲載。

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