子どものころに負った心の傷を、大人になっても口にできない人がいる。「助けて」という、たったひと言が絶対に言えない人がいる◆母子支援をテーマに研究している千葉経済大学短期大学部の柏木恭典(やすのり)准教授は少年時代、不登校児だった。「僕は、これまでずっと『不登校の理由』については口を閉ざしています。きっとこれからも言うことはないでしょう」◆つらい時を支えてくれたのは、家庭教師のN先生だった。勉強を教えるわけでもなく、レコード店や本屋めぐりにつきあい、話を聞くだけ。詮索もしない。「ただ僕に寄り添い、同伴してくれました」◆柏木さんは今、「赤ちゃんポスト」を調査し続けている。熊本市の慈恵病院が2007年に開設した「こうのとりのゆりかご」には、15年度までに国内外から125人が預けられた。先行したドイツの例から、切羽詰まった無言のSОSに応える「匿名の支援」という考え方が根底にあるのだと知る◆柏木さんを招いた講演会「いのちに寄り添う~僕が赤ちゃんポストに惹(ひ)かれる理由」が23日午後1時半から、佐賀市のアバンセである。参加費700円。「赤ちゃんを遺棄した女性は決まって『誰にも相談できなかった』と言いますが、なんとなく分かるのです」と柏木さん。原点には、ただ寄り添ってくれたN先生の姿がある。(史)

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