佐賀市はJR佐賀駅周辺を核としたコンパクトシティーの実現を目指している=同市駅前中央1丁目

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■コンパクトシティー

 120ヘクタールの大規模開発となった佐賀市兵庫北土地区画整理は、ゆめタウン佐賀の進出から9年目の2014年9月に事業が完了した。JR佐賀駅から1・3キロの好立地も追い風となり、土地区画整理組合の理事長を務めた野口儀次郎さん(84)は「商業施設と住宅が一体化し、整然としたまちができた」と胸を張る。

 事業は行政の補助を受けているが、民間の力が注ぎ込まれ、生活に必要な都市機能が短期間でそろった。持続可能なまちづくりを実現する手法として国や自治体が推進し、近年注目を集めている「コンパクトシティー」の発想を先取りしたエリアとも言えそうだ。

■老後も安心

 「買い物は歩いて何でもそろうし、病院も充実。老後も安心して暮らせそう」。全国転勤を伴う大手企業で働く渡邊達裕さん(51)は、ゆめタウンのそばに家族3人で暮らすマイホームを建築中だ。

 大阪出身で、東京や名古屋の支社勤務などを経て、この春に佐賀に来たばかりだが、妻、長女も自然と便利さが程よくそろったまちの雰囲気が気に入った。次の転勤は単身赴任になりそうだが、「後悔は一切ない」と言い切る。コンパクトシティーは、「歩いて何でもそろう」という姿が理想型だ。高齢化や人口減少が進む中、駅などを中心に生活圏をある程度まとめるという発想は欠かせない。商店などを営む人にもこうした考え方をする人が増えている。

 4年前に脱サラし、兵庫北地区でコンビニを開業した緒方晋一さん(41)も、その一人。「コンビニに通い慣れた若い世代が多く、隣のアパートも常に空きがない」。徐々に高齢化していくにしても、今後数十年にわたって徒歩圏の客も見込める立地の良さが独立の決め手になった。開業後、中高一貫の佐賀清和学園が近くに開校。競合店もできたが、今のところ売り上げは右肩上がりだ。

■駅前再開発

 佐賀市のまちづくりで最近注目を集めたのは、JR佐賀駅前の再開発だ。市は、JA佐賀市中央が建設計画を進める複合ビル内に、コンベンション機能を持つ複合施設設置を見据えていたが、計画に参画しないことを決めた。

 中核テナントの誘致交渉が難航していたことなどが背景にあるが、郊外型店の相次ぐ進出などで吸引力が落ちているまちなか再生の難しさを痛感させる出来事でもあった。

 佐賀市の人口(10月末現在)は約23万4千人。この5年間でみると、約2300人減った。このまま策を講じなければ2035年にも20万人を割り込むとの推計もあり、市は昨年10月、2060年の「20万人維持」を目標にした総合戦略を策定した。雇用創出や定住促進、子育て環境の充実、まちづくりの4分野を軸に、民間活力を生かしながら施策を進める考えだが、ここにも、コンパクトシティーの考え方を色濃く反映させている。

 大規模な予算を投入し、均衡した発展を目指したのは昔のこと。限られた予算を糧に民間の力を引き出し、地域の姿をどう描くのか。知恵が求められている。

 コンパクトシティー 住宅や病院、商業施設など生活に必要な機能を中心部に集め、高齢者でも住みやすいまちづくりを目指す政策。自動車利用を前提とした郊外への都市開発を抑制し、効率的で持続可能な都市を前提とする。

 コンパクトなまちづくりは、歩いて行ける範囲の生活圏が一つの目安となっている。公共交通ネットワークや社会資本が整備されている中心部に都市機能を集約することで、自治体が道路や水道などのインフラ経費を削減できるメリットもある。

 除雪費用の増加が問題になっている青森市などが先行的に取り組み、中心部に住宅を購入した世帯への補助制度を設けている自治体もある。

=まちが動いた ゆめタウン佐賀10年=(4)

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